農林漁業の人材確保事業に大きな疑問符が付いた

2017年11月21日 06:30

徳島に出張しての行政事業レビュー・秋の年次公開検証では、1コマ目に「農林漁業の人材確保」を議論した。

農林漁業は就業者の高齢化が進む一方で若者の新規就業が少なく、このままでは産業として維持するのが困難になる。そこで農林水産省では農業・林業・漁業のそれぞれに新規就業者を増やす施策を展開している。就農に向けて農業大学校等で研修を受ける者、林業就業に向けて林業大学校等で研修を受ける者、漁業就業に向けて漁業学校等で研修を受ける者、原則45歳以下それぞれに年間最大150万円(最長2年間)を支給するというのが事業の中心である。

150万円が高額なうえ、新規就業者(全年齢)のうち事業の対象となった割合は農業9%、林業38%、漁業16%にとどまっている。これでは、一部の人へのばらまきにしか見えない。農林水産省は事業開始後に40代以下の農業従事者数が上向きに転じたことなどをあげ成果を説明したが、2016年の場合には目標32.9万人に対して実績31.8万人とかい離がある。2016年に就農支援の対象として採択された人数は1531人で、かい離を埋めるには程遠い。また事業の評価指標として研修後の定着率を用いていないことも問題である。

レビューは大学の教室で実施され、会場から「ほかの職業でもこのような支援制度があるのか」という質問が出たが、当然ながら、そのような支援はない。農林漁業への就業者を増加させる必要性はあるとしても、現行の事業が有効に働き、また効率が高い方法であるとは評価できない。レビューの結論は「見直し」であった。

ところで秋のレビューでは「建設業の人材確保・育成」も議題になった。こちらは根拠に基づく政策形成(EBPM)を試行するという位置づけで、事業自体を評価するものではなかった。しかし、高齢化する一方の就業者人口に歯止めをかける政策という点では「農林漁業の人材確保」と同様の目的を持っている。

各省が所管の業界について新規就業者を増加させる施策を展開したらどうなるだろうか。対象人口の規模は一定だから各省が取り合いすることになり、結果としてすべての事業で目標未達という事態が起きる恐れがある。これでは無駄遣いと批判されてもやむを得ない。

レビューの意見は就業支援策よりも産業自体の魅力を高める施策を進めるべきというもの。農林水産業も新技術の活用によって大きく変貌しつつある。近畿大学によるマグロの完全養殖が典型例である。新技術によって成長の可能性が生まれ、労働の内容も環境も大きく変化しつつある。このような産業の魅力を高める施策に力を入れるほうがよい。

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