プレゼントの貧乏は許せるが、貧乏くさいは許せない?

尾藤 克之

舞妓とは、京都の祇園を中心とした五花街で、舞踊、御囃子などの芸で宴席に興を添えることを仕事とする芸妓の見習い段階の少女を指す。舞妓特有の厳しいしきたりがあり、かなりの忍耐が必要とされる。また、舞妓が日中に、花街や花街以外を出歩くことはめずらしく、多くは変装舞妓(舞妓体験してる人)とも言われている。

今回、紹介するのは『京都花街の芸舞妓は知っている 掴むひと 逃すひと』。著者は竹由喜美子(以下、竹由氏)。14歳から踊りの稽古をはじめ、16歳で舞妓になり、5年後に襟替えをして芸妓となる。舞妓の仕事は奥が深いが、私たちが応用できるものはないか探ってみたい。出版はアゴラ出版道場でもお世話になっている「すばる舎」が担当している。

プレゼントでもっとも無難なのは高級○○

――12月はイベントが多い。クリスマスの影響もあり、世の中の男性にとってなにかと出費(プレゼント)が多い時期でもある。しかし、プレゼントは簡単ではない。高くても相手の好みでなければ外してしまう。果たしてどうすべきなのか。

「芸妓時代に、お客様からプレゼントを頂戴することがありました。贈り物というのは難しくリスクをともなうというのが、その頃からの実感です。プレゼントをもらって文句を言うなんて、と思われるかもしれませんが、困るものを渡されるのは苦痛です。思いやりがともなっていなければ、好意の押し付けになりかねません。」(竹由氏)

「では、なにがもっとも無難なのでしょうか?甘いものが好きなひとは多いでしょうから、毎日のおやつタイムの予算ではちょっと手が出ないような有名パティシェの高級スイーツ、話題のお店のものは喜ばれると思います。」(同)

――つまり、もらって喜ばれるのは、「高級な消えもの」になる。高級チョコやクッキーなどであれば概ね喜ばれると考えてよさそうだ。竹由氏によれば、量はまったく関係ない。「このお店のスイーツ、どんな味なのか食べてみたかった」という気持ちが満たされればそれで十分なのである。“かさ”を考えれば少量が望ましい。

「個人的に贈りたい相手に自然に渡せる間柄に至っていない場合は、奮発してください。相手の職場や部署ななど、お相手の好みがわからなくても味覚のちかいひととは距離感もちかくなりやります。たとえばワインがお好きなかたであれば、自分が好きな銘柄を贈るとか。お祝いごとなら少しよいシャンパンもいいですね。」(竹由氏)

「ちゃんとした贈り物であれば、ご本人があまりお好きでなくても、周りの皆さんでたのしんでもらえるでしょう。渡ってからの使い勝手も考えてください。」(同)

――この場合、相手が受け取った際の印象も重要だ。ワインでもシャンパンでも、専門店や百貨店で買い求めることが望ましい。包装紙も量販店の袋で渡したばかりにケチくさいと思われたらプレゼントをしたのに台無しになってしまう。

「同じ理由で多くの女性がマイナス評価をくだすのが、ディスカウントショップで買った高級ブランドものです。ディスカウントのお店といっても十分お高いですよね。高額なものを贈ってよろこばれたいのなら、なぜと思ってしまいます。もし、無理をしているなら、高額なものなど渡さなくてもよいのです。」(竹由氏)

プレゼントをするなら徹底的リサーチを

――今日の話を聞く限りでは、プレゼントの選びかたは難しいことがわかる。その人の属人性が素晴らしくても、プレゼントで印象を落としてしまう危険性があるからだ。

「相手にブランド品を贈るということは、何をよろこぶのかわかっていないと逆効果です。好みや、ほしいものがわからないから、『とりあえずブランドものを贈っておけばまちがいないだろう』。そのようなお考えの人が多いのです。」(竹由氏)

「プレゼントは、相手をよろこばせようとするものであること。好み、年齢、いまの流行など、いろいろと考えをめぐらせ、センスとリサーチ力をフルに発揮する、とてもむずかしく面倒なものです。その手間を、資力にまかせて省くのなら、せめてそのお金は惜しみなく使っていただきたいものです。」(同)

――安くあげたいのなら、贈らなくて結構。贈り物がよいか悪いか以前に、自分に対する思いのほどが見えてしまうということだろうか。

「親しい芸妓仲間たちと話をしていて、皆でうなずくのが、『貧乏は許せるけれど、貧乏くさいのは許せない』。貧乏くさいプレゼントへの評価は、低いとかゼロとかではなく、マイナスです。男女ともに、よほど時と場合と相手との距離、タイミングを考えないと …。なお、基本、手づくりは重いです。リスキーです。やめるべきです。」(竹由氏)

――「高級な消えもの」以外を贈るならば、相手がよろこぶものを徹底的にリサーチすべきかも知れない。京都花街の世界で知り得た処世術とはなにか。チャンス、商機、人の心を掴んで離さない、そのような人物評価を知りたい人にとって最適な一冊である。

参考書籍
京都花街の芸舞妓は知っている 掴むひと 逃すひと』(すばる舎)

尾藤克之
コラムニスト