電力XIoTベンチャーの未来は明るい

2017年11月27日 06:00

こんにちは。Nick Sakaiです。私は今、自分でベンチャーを起業する傍ら、電力XIoT界隈のインキュベーションを手がけています。ITのスタートアップに比べて「モノ」が絡むIoTは中々外からの参入が少なく、特に、交通よりも電力ベンチャーは少ないので、業界のエコシステムの貢献に努めております。

そんな中、慧眼のNewsPicksでの対談記事 「【濱口×脇谷】アマゾン、グーグルは自動車メーカーの脅威になるのか」を拝見して、大変感銘を受けたので紹介させてください。これは、ビジネスデザイナー濱口 秀司さんと本田技術研究所の執行役員で、今年4月に新設された「R&DセンターX」センター長を務める脇谷勉さんの東京モータショーでの対談です。

濱口さんは言います。

自動車に限らず産業にはいくつかの見方があります。その産業・商品がすごいインテグレーション(I)している、いろいろなものを調整して最後きれいに組み上げる業界、例えば、ロケットです。汎用部品を使うこともありますが、インテグレートのたまものです。

また、その反対側にあるのがモジュラー(M)です。例えばデスクトップパソコンで、僕がアキバでボードやケースを買ってきたらつくれるんですよ。これがモジュラー化されている状態です。

そして、いわゆる「バリューチェーン」において、ある会社や業界が、付加価値連鎖の全てを占めるケース(オール、A)とその一部だけを切り取って担うケース(スライス、S)があります。

インテグレーションか?モジュラーか?を縦軸に、オールか?スライスか?を横軸に、濱口さんは以下のような4象限のマトリクスを描かれます。

これは私にとっては目からウロコでした。巷間言われるモビリティの電動化による業界変革の4ステップをとても綺麗にまとめられています。その4ステップとは、以下のようなものです。

(1)トヨタやホンダなどガソリン車メーカーは、擦り合わせノウハウを武器として系列内でインテグレートするオール戦略を取っていた。

(2)そこからデンソーのようなスーパー部品メーカーが出現して、系列外にも供給し始める、

(3)しかしガソリン車からEV化が進むとパーツの数が減って、モーターと電池と駆動制御と躯体をまるでプラモデルを組み立てるような感覚で誰でも作れるようになる(モジュール&スライス)、

(4)新しいパラダイムシフトの混沌の中から、アップルマッキントッシュが出たようにテスラがモジュールを統合してバリューチェインを統合しブランド化を図る。

(5)さらに濱口さんは、テスラは実は自社EVをモジュールから、インテグレートの芸術の域に高めようと思っている。(確かにイーロンマスクはスペースXでそれを成功させている。)

実はこのモデルは電力セクターにも全く同じステップで適用されるものと私は考えます。図にすると以下のようなものです。

(1)そもそも世界の電力会社は、規模の効率性を求めて地域独占で発電・送電・配電・小売のサプライチェインを一貫して供給するオール事業だった。また高電圧や大規模な発電所だから、電力ユーザー技術も高い専門性が要求されていた。インテグレートな技術を必要とされていた。

特に日本の電力会社は、瞬時低圧低下への対応や、極限まで停電を減らす、需要と供給をバランスして周波数を極めて狭いレンジで調整するなどはもはやアートの領域だった。実は、良質な水源と知的水準の高い労働力と並んで信頼度の高い電気が日本の高度経済成長の源泉だったと言っても過言ではない。

(2) ところが、1990年代には欧米で発電・送電・配電の分離と、発電セクター・小売セクターの競争市場化は進み、オール戦略は崩され始めた。しかし、相変わらずの集中制御管理・強電運用技術が求められていたので重電メーカーを中心に技術的はインテグレイトされていた。これが第二段階である。

(3)ところが、2000年代後半から太陽光発電が爆発的に普及し、電力システムは次第に分散化・デジタル化する。太陽光発電は伝統的な発電技術に比べて素人が扱いやすく、モジュール化が進んだ。(まさに太陽電池パネルのことをモジュールという)。2017年の今、電気自動車に引っ張られて特にカリフォルニアや欧州の一部地域、豪州では定置式リチウムイオン電池が普及している。誰でも簡単に、モジュール化した電気自動車・電池・太陽光発電を繋いでマイクログリッドを作れるようになった。これが第三段階である。

(4) そこで、このような分散・デジタル電力システムのサプライチェインを一手に握り、新しいUXで付加価値化して供給しようとするプレーヤーが現れる。イーロンマスクのテスラである。彼の会社は最近「テスラモーター」から「テスラ」と名前を変え、ソーラーシティという屋根おき太陽光発電事業者を買収、据え置き型蓄電池Power WallとEVの三点セットでまるでアップルMacintoshのようなUXで電力事業の再定義を図っている。これが第四段階である。

(5) 濱口さんは、イーロンマスクはEVでインテグレートを図っていると指摘されたが、実は電力システムでもテスラはインテグレート化を図っている兆候がある。例えば、高圧変電所に蓄電池を実装したり、130万世帯が住むプエルトリコの電力システムを自ら構築する表明をした。

米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は6日、自社が手がける蓄電池や太陽光パネルを使い、巨大ハリケーン「マリア」で壊滅状態になった米領プエルトリコの電力インフラを再建すると明らかにした。

(2017.10.17日経新聞)

どうでしょうか。電力システムにおいても、モビリティの電動化と共鳴しながら、4象限をぐるぐる回っているのをお分りいただけたでしょうか。

ところで、テスラがモビリティをインテグレイトすることも至難の技ですが、電力はそれ以上に厄介ですと。私は、イーロンマスクがサプライチェインの全てを握り、電力供給に関わる全技術をインテグレートできる可能性は米国でさえ低いと見ています。

ましてや米国と電気事業のネイチャーはまったく異なる日本のエコシステムはさらに難関で、そこに日本勢の勝機はあるのではないかと思います。しかもアジアにおける近似性は日本のそれが高いからガラパゴスにもなりにくいです。守秘義務上あまり多くを語れませんが、キーワードはP2P、シェアリングエコノミーが米国・中国・日本で全然違うのです。そして東南アジアやインドは日本式が好きです。

さて、前段の記事で、もう一つの目からウロコは、インターフェイスの3類型を明確化されたことです。濱口さんは言います。

Amazon EchoやGoogle Homeとかが出てきましたが、くしくもあの手の会社が同時期に出してきたのには意味があって、正しいかどうかはわからないんですが、結局はインターフェイスを取ろうとしているだけだと思うんです。
インターフェイスには3つのパターンがあって、モバイルでのインターフェイス、固定環境である家の中でのインターフェイス、移動環境であるクルマの中でのインターフェイス。

私も完全同意です。そして一言付け加えさせていただくと、その全てのインターフェイスには「電気」がついているんですね。モバイルにはスマホバッテリーがEVには巨大バッテリーが、そして言わずもがな家をあかりや熱や電子機器で支えているのは電気です。イメージとしては以下の図のようになります。

この3つのインターフェイスを支えているのは電気です。今業界のバズワードはMobility As a Service (SAAS) です。サービスとしての自家用車です。しかし、この3つのシーンを統合できるUXを与えるLife As a Service (LAAS)を一気通貫できれば、膨大なビジネスチャンスがあります。それが、Amazon EchoやGoogle Homeでなければならない必然性は全くないのです。3つのシーンのバックドアを握っている電力をテコにしてインターフェイスを握る登坂ルートもあると思います。

私は、若いベンチャー起業や大企業、さらにベンチャーキャピタルやインキュベーターと一緒にエコシステムを構築する過程でその大金脈を掘り当てたいと思っています。ご興味のある方はrtf.sec(アット).gmail.comまでご連絡ください。一緒にオープンイノベーションを進めていきましょう。

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