「解禁破り」を指摘された朝日新聞の採用活動を考察する

2017年11月29日 06:00

2017年11月28日にエントリーされた、『採用活動の『解禁破り』を批判し自身も破る朝日新聞』を読ませていただいた。投稿者は、山田肇氏(東洋大学名誉教授)。山田氏は、2つの問題提起をしている。

1つは、経団連が策定した「採用選考に関する指針」の申入れが遵守されていないことについて。朝日新聞は「解禁破り」としているが、日本企業の大半は経団連に加盟していことや強制力がないことから、指摘には意味が無いとする点。

もう1つが、朝日新聞採用チームの『「本日は大阪本社で会社説明会!現在、パネルディスカッション中」』(2月19日)のツイートを指して、「解禁破り」としている点。

双方の思惑を解決するのが採用活動

まず、1つめの指摘について解説したい。就職情報サービスを提供する企業は、申込企業から参画料を頂戴し情報を正しく掲載することで成り立っている。企業と学生の正しい橋渡しする存在ではない。経団連に加盟する企業にも、「早くいい学生が採用したい」「採用計画を充足させたい」という思惑がある。

この双方の思惑を充足させるのが採用活動になる。「日本企業の大半は経団連に加盟していない」という指摘は正しい。しかし、学生の志望は、経団連に加盟している大手企業に集中する特性がある。中小零細企業が内定を出したところで内定辞退されることが明白だから、スケジュールを大企業より遅らせる必要性が発生する。

ここから、いえることは、「採用・就活」は、大手企業中心だという点にある。この構造自体は約50年間変わっていない。なぜ、この構造が変化しないのか。

採用コストという考え方がある。これは、1人を採用するにあたってかかる費用のことである。1980年代のバブル末期、リクルート社は約1000人の新卒採用数に対して、年間100億円(1人あたり1000万円)に近い予算を投じていたといわれている。その成果が、のちの人材輩出会社として同社のポジションを形成していった要因であるともいわれた。

会社説明会を思い出していただきたい。入社希望の学生が、企業が用意する場所にわざわざ足を運んで参加してくれる。そのうえ誰に言われるまでもなく丁寧に詳しく企業研究までしてくれる。テレビCMはたったの15秒か30秒だが、会社説明会は、集まった学生に対して、2時間も広報できる絶好の機会になる。

採用活動は企業にとって人員確保以外にも大きな効果が期待できるため、採用コストをかけて多額の予算を投下する。学生は、企業にとって将来を担う新入社員候補であると同時に消費者(お客様)である。だから、企業は「厳選採用」を演出する。

自社の商品を買っていただけるお客様に失礼な対応はできないのである。仮に落ちたとしても、ネガティブな印象を持つことなくフェーズアウトしてもらう必要性がある。

各ツイートから見えてくること

もう1つの指摘についても解説したい。実は、意外なことがわかった。『「2月14日のツイート」』を確認すると以下のように記載されている。

「17日(金)から会社説明会が始まります!初日は東京、18日博多、19日大阪、20日名古屋です。日程が昨年より早まっていますので、情報収集のためにもぜひ。採用情報サイトでご予約を。」(2月14日ツイートより)

2018年卒は、3月から会社説明会開始、6月から面接選考開始が取り決めである。2月19日大阪開催の会社説明会は「違反」ということになる。一方、インターンシップ、企業研究、仕事研究などは、2017年3月前に開催しても問題はない。2月19日は「会社説明会」となっていることから、朝日新聞は説明をされたほうがいいのではないかと思う。

参考までに、発行部数国内1位の読売新聞はどうだったのか。『「3月1日のツイート」』を引用したい。

【3月到来。採用に関する広報活動解禁】読売新聞は3月に社員との対話を中心にした会社説明会を、4月15日にはマスコミセミナーを行います。ご予約は読売新聞採用HP…http://saiyou.yomiuri.co.jp/ で。「MY PAGE登録」が必要です。ご参加をお待ちしています。(3月1日ツイートより)

会社説明会やマスコミセミナーが、3月以降に開催されることが発表されている。『「記者体験会」』というインターシップが3月以前に開催されているが、これは違反ではない。

変わらない採用市場

では、違反した企業が悪いのかといえばそうともいえない。まず、罰則がない。朝日新聞が指摘した「解禁破り」の数値も実態に近い。私は、20年ほど前、採用事業をおこなう、ユー・ピー・ユーという会社に所属していた。以降、長年にわたり採用事業にたずさわっているが、「解禁破り」はもっと多いのではないかと感じている。

オープンエントリー(大学無記名)を打ち出しながら、実際には費用をかけて個人情報を収集して採用結果に反映させていた企業。特定大学は絶対に申込みできない会社説明会などグレーなものが多いが、罰則がないから効果は無い。新卒採用は50年以上も変わっていない。おそらく今後も大きくは変わらないと予想している。

尾藤克之
コラムニスト

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