【映画評】プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード

渡 まち子
プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード【2枚組】

1787年、幼い息子を病で亡くし失意のどん底にいた作曲家モーツァルトは、陰鬱なウィーンを離れ、名士たちからの誘いに乗り、新作の作曲のためにプラハを訪れる。プラハではオペラ「フィガロの結婚」が大評判で、モーツァルトは友人宅に滞在し、「フィガロの結婚」のリハーサルと新作オペラの作曲に励むことに。そこで彼は若く美しいオペラ歌手スザンナと出会い、互いに惹かれあう。一方、女好きで傲慢なサロカ男爵も、スザンナを狙っていた…。

モーツァルトがプラハで「ドン・ジョヴァンニ」を初演したという史実に着想を得た愛憎劇「プラハのモーツァルト 誘惑のマスカレード」。天才音楽家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生誕260年を記念して製作された作品だ。モーツァルトを描いた作品といえばアカデミー賞を受賞した傑作「アマデウス」がすぐに思い浮かぶが、そこではオペラ「ドン・ジョヴァンニ」は父の呪縛の象徴とされていた。本作では、このオペラ誕生の裏側には、モーツァルト自身を巻き込んだ愛や嫉妬がからむ三角関係があったという、新たな解釈で描かれている。

モーツァルトを演じるのは「ダンケルク」にも出演していた若手俳優のアナイリン・バーナード。まだ初々しさが残る天才が、思いがけず恋に落ちる様を繊細に演じている。生誕260年記念にしては少々地味な作品という印象がぬぐえないが、モーツァルトがプラハの街をとても愛したのは事実らしい。実際、この街は“百塔の都”と呼ばれる美しい古都で、このプラハでの全編ロケが本作に歴史ものらしい重厚感を与え、魅力あふれる作品にしている。もちろんモーツァルトの名曲がたっぷり楽しめるのも嬉しい。
【55点】
(原題「INTERLUDE IN PRAGUE」)
(英・チェコ/ジョン・スティーヴンソン監督/アナイリン・バーナード、モーフィッド・クラーク、ジェームズ・ピュアフォイ、他)
(新解釈度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年12月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。