日銀総裁は黒田再任でもう決まり

2017年12月09日 06:00

黒田東彦・日銀総裁(日銀サイトより:編集部)

緩和の泥沼からの道筋を

安倍首相が総選挙で圧勝した直後から、首相に全面的に協力、譲歩する黒田日銀総裁の留任説が浮上してきました。総裁人事で間違えると、大誤報となり、社内処分の対象になりますから、メディアはまだ慎重です。結論を申せば、「黒田氏の続投はもう決まり」で、間違いないと思います。財政金融関係者の間でも定説になっています。

米国の連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長(中央銀行総裁)にパウェル理事の昇格が11月早々、明らかにされました。任期切れは来年2月ですから、3か月前に確定(上院の承認が必要)したのです。黒田氏の任期切れは来年4月です。こちらも年末の来年度予算案が決まるころには、正式発表となりましょう(両院の承認が必要)。

安倍、黒田ラインの二人三脚で、無謀なほど中央銀行の大転換に踏み込んでしまいました。その本人に責任をとってもらい、次の任期4、5年で道筋をつけてもらうしかありません。首相も続投ですから、先進国で最悪の財政金融を2人で転換してもらうしかありません。「後任に任せるよ」とはいきません。

首相と会った側近の本田スイス大使(官房参与)は、「新しい人にかわったほうがよい」、「やれといわれれば、自分にも意欲がある」と言っていると、新聞は伝えています。側近の本田氏が本心でそんなことをいうはずはありません。ぎりぎりまで「黒田留任」をメディアに書かせないないために、攪乱情報を流しているのです。こういう話を流せば流すほど、黒田氏の留任は既定路線になっていると、信じるのが自然です。

代えるに代えられない断崖

総裁が代われば、市場は過敏に反応し、波乱が起きます。これまで株高は異次元緩和に支えられてきました。さらに日銀による上場投資信託(ETF)の購入(20兆円)、年金基金などの官製マネーによる株式投資が加わりました。最近は逃げ足が速い外人投資家主導の相場形成です。総裁を代えれば、市場が疑心暗鬼に陥りかねません。

日米欧のうち、米国と欧州の金融緩和政策は正常化を目指しており、日本だけがまだ反対方向に向かっています。首相と日銀総裁がともに過ごす今後、4,5年で、正常化の見取り図を示すべきです。

政治家は物事を自らに都合のいいように解釈して宣伝する職業です。異次元緩和と財政拡張を両輪に、戦後2番目に長い景気拡大、株高、企業業績の回復、雇用創出を生み出したと言っています。

景気拡大といっても、安倍政権下では年率1.1%の低成長にすぎず、しばしば引き合いにだす民主党政権下の1.8%に及びません。株高により家計の金融資産は安倍政権では年率2.9%増え、民主党政権の1.8%をしのぐものの、実体経済の改善が伴っていないのです。

水面下の危機を語らぬ政治

問題は、水面上に見えている景気好転も、水面下の異次元金融緩和、それを可能にした財政拡大(財政赤字の拡大)に支えられているという点です。日銀が国債をどんどん買ってくれますから、政府は財政赤字を膨らませても、国債消化に困ることはありません。日銀による財政ファイナンスとはこのことで、先進国最悪です。さすがに最近は、年間80兆円も買っていた国債の購入量を減らし始めてはいます。

日銀は購入した国債を将来、どういう計画で償還していくのでしょうか。恐らく何十年もかかるといわれます。その間、金利が上昇(国債価格の下落)したら、日銀に巨額の含み損が10兆、20兆円というような規模で増大していきます。日銀の自己資本が棄損したら、国が出資して穴埋めしたらよいという識者もいます。

そのカネは国債発行で調達するしかありません。だれが買うかといえば、主に日銀でしょう。自己資本が棄損して、財務体質が劣化した日銀に、国債を買わせなければならないというおかしな構図です。いくら通貨供給量を増やしても、消費物価の2%目標の達成に効き目がないのに、効き目があると信じ込んで、巨額の国債を買い続けたツケが水面上に浮上してくるのです。

黒田氏が続投するとすれば、将来計画、見通しを明らかにしなければなりません。安倍首相は国会答弁で「消費税の使途の変更により、2020年度の基礎的財政収支の黒字化は困難となる」と、認めました。ではどうするか。「財政健全化の旗は降ろさず、実効性の高い計画を示していく」と述べました。

そんなことができるのでしょうか。これまではゼロ金利のおかげで国債費は少なく済みました。将来、経済が正常化して金利が上昇局面に入ったら、国債費(利払い費)が何兆円という単位で増え始めます。口先だけで「実効性の高い計画」などと、責任ある地位の政治家は発言してはいけません。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年12月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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