動き始めた電波改革:本当に大事なこと

小林 史明

先ごろ、政府の規制改革推進会議が「電波」の有効利用を進める提言を盛り込んだ答申を、安倍総理に提出しました。

菅官房長官も記者会見で「規制改革会議から積極的な提言を期待するとともに、提言を踏まえ、電波を効率的に利用する方策を検討していく」と述べたことから、電波制度が大きく変わるのではないかと、メディアや通信関係業界からの注目度が高まっています。

IoT時代を見据えて議論が活発に

私が総務大臣政務官に着任前の5月にもブログ(資産価値3.7兆円公共用周波数の民間開放で成長戦略を後押し)を書きましたが、2010年から昨年までの6年間だけで通信量が20倍に達しています。今後、5G(第五世代移動通信システム)が導入され、2020年代にIoT(モノのインターネット)や自動運転、ドローンなどの「第4次産業革命」の時代が本格的に到来すると、電波が足りなくなる恐れがあります。

そこで、まず、政府や自治体用に割り当てている公共用周波数の使い方の見直しに関して、当時、行政改革推進本部長補佐として『公共用周波数の民間開放に関する緊急提言』を政府に申し入れ、議論が動き出しました。

その後、私が政務官に就任し、「自分で投げたボールを自分でキャッチする」ことになろうとは思いませんでしたが、当時指摘した問題を解決すべく、省内に検討会(電波有効利用成長戦略懇談会 公共用周波数等WG)を立ち上げて議論を進めてきました。

一方、規制改革推進会議のほうは、自民党の行革本部と別の動きで、有識者の意見を集約し、今回の答申となりました。後述するように、電波制度のあり方を巡っては、さまざまな意見がありますが、どの立場であっても、いまのままの電波制度では、今後の技術革新に十分対応できないという問題意識で一致しているのは確かでしょう。

問題の本質は「オークション」の是非ではない

ただし、電波は、国民の持つ貴重な資産でもありますから、制度や課題について正確な認識をして丁寧かつ現実的な議論をしていかなければなりません。

たとえば電波制度を見直すというと、ネットではすぐにオークションの話題に持っていく傾向があります。その中には「偏向報道をするテレビ局から免許を取り上げてオークションにかけられる」などといった事実と異なる風説が広まり、誤解に基づいた意見がこの問題の議論を混乱させてきました(そのあたりのことは、専門家の山田肇先生の解説をご参照ください)。

オークションも万能ではありません。仮に入札額の多寡だけで落札業者を決めてしまうと、国内外の大資本が公共の電波を使って国益や公益の観点から懸念のある使い方をするケースも想定されます。メリット、デメリットをきちんと踏まえて議論していかなければなりません。

この問題の本質は「オークション」が行われるかどうかでありません。

日本の経済成長の一端を担うイノベーションのプレイヤーが手を挙げやすい環境に変えていけるかどうか。

そして、国民の共有財産である電波を利用するプレイヤーから適正な利用料を得て、国民の将来的な利益になるよう活用することです。

自民党の行政改革推進本部、政府の規制改革推進会議の提言をテコに、今こそ、硬直的だった電波の使い方を新しい時代に合わせて有効に利用できるよう改革を進めていきます。

「AbemaTV」に見る未来の兆し

身近な事例をひとつ挙げます。元SMAPのメンバーが出演して話題になったAbemaTVですが、こちらの現代ビジネスの記事で、NewsPicksのプロピッカーとしてもおなじみの元TBSの氏家夏彦さんが指摘されている視点は参考になります。

2020年、次世代通信規格『5G』が実用化されれば、これまで以上に高速かつ大量のモバイル通信ができるようになります。そうすると既存の活字メディアも含め、あらゆる情報が動画を使ったコンテンツに置き換わっていくのです。(出典:週刊現代「赤字は気にしない「AbemaTV」がテレビを支配する日」)

5Gなど通信システムやその他のテクノロジーの進化を見据えて、今後の電波改革の議論を進めていく必要があります。

例えば、通信速度が上がり、スマートテレビが普及すれば、近い将来、放送用の周波数帯と通信用の周波数帯の垣根はなくなり、家のテレビはスマートフォンやPCと横並びの“映像を映す画面のひとつ”となる可能性が十分に想像できます。

テレビ・動画市場は、もはや国内放送局同士の戦いではなく、Netflixやyoutube、Amazonプライムといった世界の有力プレイヤーとどう競合していくかの段階になっており、正しい現状認識が必要です。

そのような背景もあり、総務省では、VHF帯の一部(207.5~222MHz)の使い方に関して、新しい提案を来年2月中旬を期限に募集をスタートしました。

 報道資料:VHF帯(207.5~222MHz)の利用に係る調査等の実施

メディア・通信業界に詳しい方はご承知と思いますが、こちらはNOTTVが昨年6月に撤退して空いた帯域です。今後のVHF帯の使い方の指標になりうる画期的なアイデアが出てくることを期待しています。


編集部より:この記事は、総務政務官、衆議院議員の小林史明氏(広島7区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2017年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林ふみあきオフィシャルブログをご覧ください。