電波オークション反対者が唱える迷信

山田 肇

規制改革推進会議は11月末に『規制改革推進に関する第2次答申』を決定した。電波制度改革では「価格競争の要素も含め周波数割当を決定する方法」を導入することになった。新方法は、申請人が新たに割り当てる周波数帯について経済的価値を踏まえた金額を競願手続きで申請し、総務省はこの金額と、人口カバー率・技術的能力など他の項目を総合的に評価して免許人を決定する。この金額が政府に納付されれば、これは実質的に電波オークションの導入を意味する。諸外国で広く導入されている電波オークションをわが国で実施することについて、風穴を開けた答申であると評価できる。

一方で、わが国では電波オークションについて依然として懸念が表明されている。第一は、オークションに資金を使うためにサービスインが遅れるのではないかという懸念。第二は、オークション費用が消費者の支払いに影響するのではないかという懸念である。二つとも迷信である。

オークションで落札すればその金額を政府に支払うが、これはどうすれば回収できるだろうか。電波を棚に祭っても金は入らないから、落札企業は通信網の整備を急ぐしかない。オークションがあるからサービスインが遅れるというのは論理的ではない。

実は、2000年前後に欧州で携帯事業者が第三世代のオークションに高値を付け過ぎ、サービスインが遅れたことがあった。しかしこの失敗に学んで、それ以降のオークションでは入札金額は抑制された。一方で、高値入札で失敗した愚かな経営者は退陣した。

それでも愚かな経営者が出現するのを恐れるのであれば、入札の際に「二年以内にサービスインしなければ電波を没収する」というような条件を付ければ済む。

いくらなら新しい電波サービスが消費者に受け入れられるだろうか。すでに人々はLTEを利用しWiFiも広く使われている。新サービスは既存のLTEやWiFiと競争するし、新サービスを提供する他の企業とも競争する。市場競争は提供価格の高騰を抑制し、価格への転嫁はむずかしい。

新サービス免許は複数の事業者に与え競争させればよい。それでも提供価格が高騰したら談合が疑われるから、公正取引委員会の出番である。