大腸がん診断後でも遅くない;繊維性食品を食べよう

写真ACより(編集部)

1ヶ月少し前のJAMA Oncology誌に「Fiber Intake and Survival After Colorectal Cancer Diagnosis」というタイトルの論文が発表された。ステージ1-3期の1575名の大腸がん患者を追跡調査し、食物繊維摂取量と大腸がんによる死亡率やすべての要因での死亡率(全死亡率)を比較した結果だ。

1575名の患者さんのうち、女性比率が963名(61.1%)と高いのは、健康医療産業従事者(看護師さんを含む)が対象となっているからであろう。おおよそ8年間の追跡調査の結果、773名が死亡しているが、大腸がん関連死は174名である。大腸がんと関係のない死亡原因が多いのは、対象患者の年齢中央値が68.6歳と少し高いからであると思われる。

この論文によると、食物繊維が1日5グラム増えるごとに、大腸がんによる死亡リスクが、0.78倍(95%信頼区間は0.65-0.93)に減少する。診断後に食物繊維摂取を増やした患者さんでも、大腸がんによる死亡率は減る。診断後、食物繊維摂取量を1日5g増やすと、大腸がんによる死亡率が18%減少、すべての原因を併せた死亡率も14%減少するとのことだ。

しかし、驚いたのは、食物繊維の元となる食品類によって違いがあると述べられていたことだ。シリアル由来の食物繊維が1日5グラム増えるごとに、大腸がんによる死亡率が0.67倍(95%信頼区間 0.50-0.90)と上記の数字より良くなる(全死亡率は0.78倍)のに比べて、野菜由来の食物繊維では、1日5グラムごと増加では、全死亡率が0.83倍(統計学的に有意)、大腸がんによる死亡率は0.83倍(95%信頼区間、0.60-1.13で統計学的には有意でない。前回も紹介したように、信頼区間が1をまたぐと統計学的には差があるといえない)となる。フルーツが大好きな私には残念な結果であるが、果物由来の食物繊維では、統計学的には意味がないとのことであった。毎日、バナナ、リンゴ、梨、イチゴ、柿と果物を大量に食べているのに、何と言うことだ!また、全部の穀物を併せた量が1日20グラム増えるごとに、大腸がん関連死が0.72倍になる。

食物繊維は、腸内細菌類に影響を与えて免疫環境を変えることが話題になっているので、

今後は免疫学的な研究がさらに進んでくると思われる。もし、全身の免疫環境が変わって予後が良くなるのなら、他のがんでも同じ傾向を示すかもしれない。そして、シリアルを食べることは簡単なことだ。これで死亡率が0.67倍、3分の2になるなら、安上がりだし、副作用もない。牛乳が苦手な人やアレルギーのある人は、お茶がコーラに浸して食べればいい(牛乳を切らしたときに、コーラに浸して食べたことがあるが、正直、おいしくはない。でも、それが薬と思えば、我慢はできる)。もちろん、スティック状菓子類やビスケット類で摂取する方法もある。

日本にも、大規模なデータベースがあれば、確認することなど簡単だ。もし、こんな方法で、がん患者の予後が改善されるなら喜ばしいことだ。そして、これが大腸がんの予防につながるなら、もっと積極的に推進すればいい。私もこれから毎日、朝食と昼食はシリアルにしようかな?


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。