ローマ法王「悪魔は君より頭がいい」

長谷川 良

ローマ法王フランシスコはカトリック信者に対し、「悪魔(サタン)と如何なるコンタクトも避けるべきだ。サタンと会話を交わすべきではない。彼は非常に知性的であり、レトリックに長け、卓越した存在だ」と異例の警告を発した。13日に放映されたカトリック系放送「TV2000」とのインタビューの中で語った。

▲昨年9月に死去した著名なエクソシスト、アモルト神父

▲昨年9月に死去した著名なエクソシスト、アモルト神父

法王は、「サタンは具体的な悪行のために暗躍する。漠然とした事象のために存在するのではない。彼は1人の存在だ。人間は悪魔と話すべきではない。彼に負けてしまうからだ。彼はわれわれ以上に知性的な存在だ。彼はあなたを豹変させ、あなたを狂わせるだろう。悪魔にも名前があり、私たちの中に入ってくる。彼はあたかも育ちのいい人間のような振る舞いをする。あなたが“彼が何者であるか”を早く気が付かないと、悪業をするだろう。だから、彼から即離れることだ。サタンは神父も司教たちをも巧みに騙す。もし早く気がつかないと、悪い結果をもたらす」と説明している。

南米出身のローマ法王フランシスコは前法王ベネディクト16世とは違い、頻繁にサタンについて語る。法王は聖職者の未成年者への性的虐待は悪魔の仕業だという。教会刷新問題で抵抗する勢力にもサタンの痕跡が見つかるというのだ。悪魔との対話については「必要ならばエクソシストの助けを受けるべきだ」と助言している。南米出身のローマ法王にとって、サタンはリアルな存在なのだ。

フランス北部のサンテティエンヌ・デュルブレのローマ・カトリック教会で昨年7月26日、2人のイスラム過激派テロリストが礼拝中のジャック・アメル 神父(85)を殺害するテロ事件が発生したが、法王は、「神の名で神父を殺害したサタン的なテロ事件だった」と指摘している。法王によれば、殺害された神父は殺される直前、“サタンよ去れ”と叫んだという。

法王庁立グレゴリアン大学教授だったエクソシストのサンテ・バボリン氏 は悪魔はシンボル的な存在ではなく、悪魔は存在すると強調する。昨年9月に死去した著名なエクソシスト、ガブリエレ・アモルト神父は、「悪魔の憑依現象は増加しているが、聖職者はそれを無視している」と警告している。2人のエクソシストはフランシスコ法王と同様、「悪魔が象徴的な存在ではない」ことを体験で知っているわけだ。

聖書の中で悪魔については約300回も言及されている。有名な個所を拾ってみると、「悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを裏切ろうとする思いを入れていた」(ヨハネによる福音書13章2節)とか、十字架に行く決意をしたイエスを説得するペテロに対し、イエスは「サタンよ、引きさがれ」(マルコによる福音書8章33節)と激怒している。

悪魔の存在とその実相について、第4ラテラン公会議(1213~1215年)では、「悪魔とその群れは本来、神によって善の存在として創造されたが、自から悪になった。神は人間と同じように天使にも自由を与えた。神を知り、愛し、奉仕するか、神から離れていくかの選択の自由を与えられた」と記述されている。なお、バチカン法王庁が1999年、1614年の悪魔払い(エクソシズム)の儀式を修正し、新エクソシズム儀式を公表している(「悪魔(サタン)の存在」2006年10月31日参考)


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。