「スター料理人は、地方が育てる。」耕すシェフの町邑南町の挑戦

第75回地域力おっはークラブは、A級グルメ構想の仕掛人、島根県邑南町(おおなんちょう)の寺本英仁(てらもとえいじ)さんに御話いただきました。

石見和牛も、チョウザメも、はつか大根も・・・、超一流の食材は全て田舎でつくられる。ところが、地元には素晴らしい食材を提供するレストランがほとんどなかった。

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(寺本さん自身も牛を飼う。)

食材を販売するだけでは、十分な利益は上げられない。むしろ、加工品を東京から高い値段で購入し、地域からお金が流出していた。

なぜ、地元の(素晴らしい)食材を扱わないのか。
地元のお店に聞いてみた。

その理由は、衝撃だった。
お客さんが来ないから、食材を腐らせてしまう。

ならば、町で、料理人と料理(人)を愛する地元住民を育てよう

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地域おこし協力隊制度を活用して、平成23年度から「耕すシェフ」制度を始めた。調理師専門学校の卒業生などを対象に全国から募集、レストラン経営を実践しながら、また、その土地ならではの農産物を生産し、将来の邑南町での開業につなげていく。我ながら(寺本さんは)素晴らしい制度だと思ったという・・・。

ところが、最初の3年間は、誰も地元で開業しなかった。
そこで、初めて気づいたという。

土地もない、知人もいない、お金もないから、開業なんてできっこない!

住民有志や行政で、空き家を見つけて斡旋することにした。また、地元の銀行と連携して、無担保・無保証でお金を貸す仕組みをつくった。起業塾を開催して、経営のノウハウや、クラウドファンディングなど共感によるお金の集め方も教えた。

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心掛けたのは、補助金に頼らないこと。今の補助金は、変化の激しい時代に、制約が大きすぎる。時代やニーズが変わっても、同じ作物を作り続けなければいけないのは、かえってマイナスではないか。

地域のスター料理人は、地元に愛されなければならない。邑南町では、耕すシェフが開業するまでに、農家やさまざまな住民と関わるので、住民も自分たちのお店として愛着をもつ。

あるパン屋さんには、7時前からたくさんのお客さんが並ぶ。真っ先にパンを買ったおばあちゃんが、今度はレジを打つことも珍しくない。

どこに山菜があるか、どう山菜を調理するか。ということは、地元の人が1番よく知っている。地元の人が教えるからこそ、邑南町でやる意味がある

スター料理人は、地方が育てる。」だ。

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来年3月までに、11店舗が開業する予定の邑南町には、仕事や食に関する多様な選択肢が生まれ、子育て世帯も増えている。

キーワードは、SNS(スピードネーミングストーリー)だという。

寺本さんのお話を伺い、また僕も邑南町でA級グルメをいただきたくなりました。

もっと知りたい!
〇 プロフェッショナル・寺本英仁さん(島根県邑南町)から学ぶ「地域プロジェクトを進める交渉術」

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<井上貴至 プロフィール>

<井上貴至の働き方・公私一致>
東京大学校友会ニュース「社会課題に挑戦する卒業生たち
学生・卒業生への熱いメッセージです!

<井上貴至の提言>
間抜けな行政に、旬の秋刀魚を!


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2017年12月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。