【映画評】勝手にふるえてろ

2017年12月24日 06:00

東京国際映画祭でも上映された「勝手にふるえてろ」©2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

24歳のOLヨシカは、10年もの間、中学時代の同級生で初恋の相手イチに片思い中。ずっと彼氏がいなかったヨシカだが、会社の同期のニに突然告白され、人生初の経験に舞い上がる。だが、正直、ニはまったくタイプではなく、ノリきれない。そんなある日、ボヤ騒ぎを起こしたヨシカは、死ぬ前にもう一度イチに会いたいと、ありえない嘘をついて同窓会を計画。ついに憧れのイチと再会するのだが…。

中学時代から片想い中の同級生と突然告白してきた会社の同期との間で揺れ動きながら暴走するヒロインの恋の行く末を描く異色のラブコメディー「勝手にふるえてろ」。原作は、19歳で芥川賞作家となった綿矢りさの同名小説だ。ヒロインのヨシカは脳内では夢見がちな暴走女子。リアルではひねくれで自分勝手なこじらせ女子。絶滅危惧種をこよなく愛するヨシカが、どうやって現実に目を向け、理想やプライドから自分自身を解放するのかという、成長物語である。

ニはヨシカにとってはまったくタイプではないのだが、それでも確かに存在するのに対し、10年片想い中のイチはいわばヨシカの脳内で理想化された幻のような王子様だ。主な登場人物はこの3人だが、ヨシカの周囲には個性的な人ばかりが集まっていて、彼らを見ているだけでも面白い。物語にはある仕掛けがあって、それが判明する時、ヨシカのこじらせっぷりの根深さが伝わる仕組みだ。ずっと彼氏がいない役には可愛すぎる松岡茉優が、めんどくさいヒロインを大量のモノローグや、時には歌まで交えて熱演。ロックバンド黒猫チェルシーのボーカリストで監督や俳優としても活躍する渡辺大知が、空気が読めず暑苦しいニを好演している。ぶざまでかっこ悪くても、傷ついても傷つけても、それでも一歩踏み出すこと。そこから人生は動き出すのだ。イタい笑いたっぷりのラブストーリーだが、同時に個性的な味わいの人生讃歌と見た。
【60点】
(原題「勝手にふるえてろ」)
(日本/大九明子監督/松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、他)
(めんどくさい度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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