チキンを揚げてモチベーションも上げるにはどうするの?

2017年12月27日 06:00

飲食業界の正社員の半数近くが3年以内で辞めていくといわれるなか、新入社員の2年以内の離職率ゼロという驚異的数字(2015年度)を出している会社がある。その会社は、KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)。これまで、多くのマネジメント系や仕事術の本を手にしてきたが、KFCの書籍は初めてではないかと思う。

書籍名は、『ケンタッキー流部下の動かし方』(あさ出版)。著者は、元同社トレーニングコーチの森泰造さん。日常の部下との接し方や、チーム力をアップさせる「部下のまとめ方」など、実際の現場で起こった事例を基に紹介している。

昔を思い出した懐かしい一冊

「ドロップします。ハンドルOK、リットOK、タイマーOK、サーモOK、ソフトOK、バルブOK、プレッシャーゲージ上昇中です」。何の言葉かわかるだろうか。これは、KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)の厨房で、チキンを揚げる際の確認手順だ。チキンを圧力釜で揚げることから危険がともなう。作業のたびに指差し確認がされている。

部位について話をすると、ウイング(手羽)、キール(胸)、リブ(あばら)、サイ(腰)、ドラム(脚)の5種類。ウイングは、キール、リブの1/2、サイの1/3の大きさとしてカウントされる。よって、1ピースをオーダーする際、ウイングが提供されることはない。サイは大きいが、ダークミートで大味、キール、リブの味が最も良いとされている。

約30年前だろうか。私は高校生で、KFCで週2~3回ほどアルバイトをしていた。夕方5時くらいから閉店までの約5~6時間程度。お小遣い程度にしかならないが、他校の生徒と知り合いになるのが楽しかった。もっぱら話をするのは、同じ高校生か、大学生のアルバイトが多かった。店長や副店長もいたが、ほとんど会話をした記憶が無い。

結構、キツかったのが、ショートニングチェンジ(油の交換)になる。いまの機械は全自動で油が交換できるようになっているが、当時は専用の金属製容器に移して交換していた。これが熱くて非常に重い。こぼしたら火傷をしてしまう。でも懐かしい思い出だ。

自信満々で店長に昇格したものの

優秀なプレイヤーだった人がリーダーになる。どの会社でも普通に行われていることだが、部下が思うように動いてくれないと、リーダーは自信を無くすことがある。

「プレイヤーの時は仕事が楽しかったのに、今はストレスしかないという人がいます。ストレスが大きすぎて、プレイヤー時代の精彩がなくなってしまった人もいます。かつての私もそうでした。初めてKFCの店長となった時のことです。副店長時代に新店舗の立ち上げを成功させるなど、成果を挙げていたことが認められての昇格でした。」(森さん)

「素直にうれしく、『絶対にいい店をつくってみせる!』と心に闘志を燃やし、店長として働き始めました。しかし、そううまくはいきませんでした。副店長のA君が思うように動いてくれないのです KFCでは副店長にアルバイトをとりまとめる役割を担ってもらうのですが、A君はアルバイトとうまく意思疎通を図ることができませんでした。」(同)

ミスが続出し、アルバイトの人たちからも困惑が伝わってくる。森さんは、毎日、A君と話し合ったそうだ。しかし状況は思ったように改善していかない。

「気がついたら、責める言葉ばかりが出ていました。『アルバイトをもっとちゃんと動かしてよ』『難しいことなんてないだろ、俺だって副店長の時はやれていたぞ』。A君はますます覇気がなくなり、お店の雰囲気も重くなり、退職を申し出るアルバイトが続出する事態になります。初めのやる気はどこへやら。本当にきつい日々でした。」(森さん)

「当時の私はA君のよいところを認めることも伸ばすこともせず、彼ができないことにイラ立っていました。リーダーとしての仕事をできていなかったのです。」(同)

A君のできない部分にばかり目を向けて、副店長時代の自分と比較して評価し、A君本来のよさや魅力に目を向けていなかったそうだ。「私は大丈夫!」という人もいるだろう。しかし、次のような行動は誰もがとりがちだ。思いあたる人はいないか。

有名企業から転職した人にはよくある。「私の前職の、○○商事ではこうでした」「○○物産ではこういやり方はしません」。これらの言葉を発した時点でコミュニケーションは崩壊する。なぜか?それは相手を見下しているから。森さんが指摘する「副店長時代は~」と同じ意味になる。あなたの発言は大丈夫だろうか。

高定着率維持する人材育成の秘密

この記事は、昔のことを思い出しながら書いてみた。当時の、日本ケンタッキー・フライド・チキンは、1970年にアメリカのKFCコーポレーションと三菱商事の合弁で設立された企業である。現在とは、経営形態が異なることや、まだ人材育成という考えが方が一般的ではない時代。客席には、「The Wild Boys」(Duran Duran)が流れていた。

いまや、KFCは新入社員の2年以内の離職率ゼロ。つまり定着率が“上がっている”ことになる。チキンを“揚げている”だけではなく、社員のモチベーションも“上げている”。その秘密を知りたい人には一読をおすすめしたい。人材育成のヒントが見つかるかもしれない。

尾藤克之
コラムニスト

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