ハモン・イベリコのイベリコ豚が育つための雑草が干ばつで不足

スペインの生ハムの中でもイベリコ豚(黒豚)を使い、長期熟成して作り上げた生ハム、ハモン・イベリコ(Jamón Iberico)の需要は世界的に年々増加している。昨年のスペイン国内でのハモン・イベリコの消費量は1万3000トンであった。金額にして40億ユーロ(5320億円)になるという。

しかし、需要の増加に比較して生産量の増産は見込まれないため、血統100%のイベリコ豚で放牧されてドングリを食べて育って熟成されたハモン・イベリコが市販で500ユーロ(66,500円)するものだと、4年先の2021年には価格は2倍の1,000ユーロ(133,000円)に跳ね上がると指摘しているのはヨーロッパと北米に生ハムやワイン、チーズなどの販売を展開しているショップ「エンリケ・トマス」の創業者エンリケ・トマスである。

これからハモン・イベリコの価格が毎年上昇して行く傾向にある中で、生産業者にとって深刻な問題になっているのが干ばつである。スペインでこれまで記録されている干ばつの中で最大規模の干ばつに見舞われているという。その影響で、雑草が育たなくなっているのである。

イベリコ豚はドングリを食べて太って行く。その為には、雑草を食べることが必要で、のどの渇きを防ぎドングリを食べる食欲が増して太って行くのである。そして、脂肪がからだ全体を覆うようになる。これが食べた時に口の中で溶けるような生ハムの円やかさを生むのである。

ところが、干ばつで雑草が育たないためにイベリコ豚はドングリを食べる食欲が減り、しかも暑さも以前に比べ増していることから、通常だとドングリを食べるために一日に5-6㎞歩行するのが、暑さで疲労して歩行が少なくなっているというのだ。

その結果、イベリコ豚のからだが全体に丸みを帯びて太る時期が遅れてしまうことから、通常の屠殺時期である12月から1-2カ月遅らせる必要が出て来ているという。例年だと、この時期15万頭を屠殺していたのが、昨年12月は僅か4万頭を屠殺しただけだそうだ。

屠殺をする対象年齢は18か月、150キロを超えた時だとされている。200キロだと熟成に4年を掛けるという。これはコスト的に割高でもある。

また、ハモン・イベリコの品質を保証し、また偽造品の発生を防ぐ為の品質管理にも新しく規準が設けられている。「カニェテ法」と呼ばれるもので、アリアス・カニェテ前農林水産大臣の苗字をつけた基準法である。それによって消費者がハモン・イベリコの品質を理解できるようになっている。それは、原木に付けている4種類のタッグから判断できるようになっている。

黒タッグ:血統100%のイベリコ豚が放牧でドングリを食べて成長。

赤タッグ:血統75%或いは50%のイベリコ豚が、放牧でドングリを食べて成長。

緑タッグ:血統100%から50%までのイベリコ豚に、放牧されて育てられるが、ドングリ以外の飼料も与えられる。

白タッグ:血統100%から50%までのイベリコ豚に、放牧ではなく飼育場で育てられて、穀類や野菜類の飼料で育てられたもの。

 

黒タッグをつけるのに相当するハモン・イベリコは昨年だと全体の凡そ7%で、228,596頭だったそうだ。

このように4段階に分けることによって偽造ハムが市場に出回ることを防ごうとするものである。例えば、飼料で育てておきながら、あたかもドングリを食べて成長したかのような脂肪分を備えたものをハモン・イベリコとして販売するというものである。

偽造が見つかった場合には罰金、例えば、5万ユーロ(670万円)を払えばよい>といった姿勢で販売する生産業者もいるという。罰金は最高60万ユーロ(8000万円)まで科すことが用意されているそうだ。

ハモン・イベリコの中で最高級品とされているのがハブゴ原産地証明書(DOP Jabugo)のついた生ハムである。これはアンダルシア地方のウエルバ県に所在する31の自治体地区で育てられたイベリコ豚による生ハムのことである。

ところが、これまで毎年1000万の原木がハブゴ産のハモン・イベリコとして偽造されて販売されているというのである。この偽造を取り締まるべくハブゴ原産地証明認定委員会はさらにコントロールを厳しくしていく構えだ。