新年だから考えたい!遠藤保仁に学ぶ「先読み」スキル

尾藤 克之

元サッカー日本代表の遠藤保仁、撮影・佐藤亮(KADOKAWA提供)

「距離はだいたい26~27メートル」「壁の高さはありますけどね。どういう風に落としていくかですね」。次の瞬間、右サイドにコントロールされたシュートはそのままゴールに吸い込まれていった。2010 FIFAワールドカップのデンマーク戦、前半31分のシーンである。日本は、地元開催(2002)以外のW杯で初の決勝トーナメント進出を決めた。

今回紹介するのは、『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(KADOKAWA)。著者は、「国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「2014年JリーグMVP」などの記録をもつ、遠藤保仁さん。「一瞬で決断する」など、一流アスリートの思考術が興味深い。

「先読み」という重要なスキル

以前、NHK-BSに出演した、オフト元日本代表監督のメッセージが話題になったことがある。「日本はなにをすべきか」の問いに対し、「日本は世界のベスト10を目標にするべきである」と持論を展開し、「そのためには、遠藤のような選手を11人そろえなければいけない」とまとめたのである。しかし、遠藤さんは、自らを次のように評価している。

「僕はサッカー選手の中では、フィジカルに恵まれたほうではない。足も速くはないし、ドリブルでごぼう抜きするような突破力もない。身体能力だけで見れば、並の選手かもしれない。一見すると並の選手ともいえる僕が、このような結果を残すことができたのか?それは、サッカー選手として必要不可欠な能力をたえず磨いてきたからだ。」(遠藤さん)

「サッカー選手として必要不可欠な能力とは、『先を読む力』だ。フィジカル勝負では分が悪い僕が世界を舞台に戦うためには、頭をうまく使って、先読みのセンスを発揮するしかなかった。だから僕は、3〜5手ぐらいまでプレーの先を読んで、どうしたら相手が崩れるかを考えながらプレーしている。」(同)

敵と競り合ったときに、どこにボールがこぼれてくるかを予測することで、敵よりも早くボールを拾うことができる。また敵のパスコースを予測して消す。先読みをして敵よりも優位に立つことができれば、体の大きな選手からもボールを奪うことが可能になる。先読みは、世界を舞台に長く活躍するための「武器」だったと考えることができる。

「サッカー一筋の人生なので、会社員を経験したことがない。だから、ビジネススキルについては具体的なアドバイスはできない。決して恵まれているとはいえない身体能力で生き残っていくために『どう考えて』『どう決断しているか』という思考のプロセスは、これからを賢く生き抜くためのヒントになるのではないかと考えている。」(遠藤さん)

先読みを仕事に置き換える

先読みは、ビジネスの世界でも通じるスキルになる。どれくらい将来を先取りできるのか。目標水準(「何を」「いつまでに」「どれくらい」)を明確に設定できているかという度合いで使用する。その際に、先手を打っていく際の打ち方が必要になる。打ち方を考える際には、リスクを排除するために、事前に手を打っておくという意識も必要である。

低いレベルでの「先読み」であれば、「今日できることを明日に延ばさない」などが挙げられるだろう。自分の業務内で、上司に言われたことをきちんとやっていれば、このレベルでの先読みは達成できていることになる。「今日できることを明日に延ばさない」ことで、業務が遅れることのリスクを回避していることになる。

高いレベルでの「先読み」であれば、「目に見えていない特定のチャンスや問題を予測し準備する」などが挙げられるだろう。社内のプロジェクトであれば、数ヶ月先を先読みしてチャンスを作り、将来の危機やリスクを避けるために率先して行動を取る。これには、プロジェクトのストーリーや結果をシミュレーションする能力が必要とされる。

このレベルになると、社員では難しい。役員や経営層に対して働きかけられるクラスでないと実現が難しいからである。さらに、経営層になれば、全社に関わる数年程度先の先読みを考えなければいけない。自分の描くシナリオを、周囲や環境までも変えていくことで実現可能性を上昇させているなどが挙げられる。

その、シナリオを具体的に落としたものが、中期事業計画などに該当する。しかし、中期事業計画がそのとおりに実現することは難しい。よって、「高いレベルの先読み」が必要になる。具体的な事例を知りたければ、大物ベンチャー経営者などの研究をすればよくわかる。すべての意思決定が、成果と密接に関連していることが理解できるだろう。

あなたの今年の「先読み」は?

「先読み」は表裏一体である。先読みが当たることもあれば、外れることもある。いずれにしてもリスクがともなう。しかし、遠藤さんは次のようにエールを送る。「リスクが怖いからといって、その場に立ちすくんでしまうのは、失敗するよりも賢くない選択。勇気をもって行動すれば、大きなチャンスをつかむ突破口が開けるかもしれない」。

私たちは、働くことをどのように考えるべきか。遠藤さんは、「どんな状況でも楽しむことが必要だ」としている。どのような生き方を選ぶかは、人それぞれである。自分はこれからどうしたいか。その気持ちに素直になってみよう。その先にあなたが目指すべき未来が見えるかもしれない。新年だから、あなたも「先読み」をじっくり考えてみては。

尾藤克之
コラムニスト