新年の仕事が憂鬱な人。「いま」の辛い状況を改善するには

2018年01月06日 06:00

photo-ac.comより


あなたの名前は、鈴木太郎。パワハラ商事に新卒で入社し社歴は10年目にはいった。しかし上司の陰湿なイジメで毎日が憂鬱だ。昨年末から体調不良を感じている。初出勤したが、どうも気分がすっきりしない。あなたの選択肢は限定される。上司のパワハラが収まるのを待つか、なんらかの手段を講じるかだ。打ち手の手段は数パターンある。

打ち手にはなにがあるか

(1)労基署に駆け込む
ブラック企業対策の記事を読むと、「労基署に駆け込め」という人がいる。監督官と面会できたとしよう。次のように言われるはずだ。「パワハラ商事に連絡を入れます。鈴木さんから依頼があった旨を話しますがいいですね」。監督官は司法警察権を有しており、検察の捜査権と同質である。しかし、多くの案件が寄せられるので調査は簡単には進まない。

運よく調査が進むと臨検に移行する。その際、会社には帳簿や書類を用意するように通告される。原則的に、会社は臨検を拒否することはできない。臨検を妨げ虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出を拒むと、「労働基準法第120条」に違反する。しかし、労基署に駆け込んだことは多くの人に知られる。「いま」の辛い状況を改善するにはいたらない。

(2)労働委員会に提訴
個別労働紛争のあっせん、ユニオンを通じて労働委員会に提訴しても、命令までに1年は費やすことになる(却下されることも多い)。労働委員会は公的な組織になるので、権限を発揮することが可能だが審議が進まないことが多い。また、労働委員会の命令には強制力は無い。積極的に介入して解決しようとする意識の高い人は少ない。

とくに、訴訟等に移行すると、訴訟判断を優先して一切に進まない。労基署同様、会社と中長期的に争うのであれば有効な面もあるが時間が掛かる。不服があり決着しなければ、中央労働委員会に移行する。あなたの「いま」の辛い状況を改善するにはいたらない。

(3)労働組合に入会
社内に労組がなければ、外部の一般労組には入会できる。管理職、非管理職、アルバイト、契約社員でも入会できる。入会すると、労組から会社宛に団体交渉の申し入れがある。会社はこれを拒むことはできない。正当な争議活動については、刑事上および民事上の免責が与えられることになる。つまり、罰すことができない。

また、争議活動に対して不利益な取扱いもできない。あとは、労働者の覚悟になる。パワハラ商事の前で、鈴木さんの実名入りのビラをまいたり、シュプレヒコールをあげながら会社の周囲を街宣する。当事者の精神的負担もかなりのものだが、これに堪えられる覚悟があるかがポイントだろう。

(4)訴訟
民事訴訟では、強制力のある判決が下される。しかし、長期化するリスクが生じる。また必ず勝てる保証がない。労働審判という制度があるが、審理が最大3回以内のため、迅速な解決が可能であり民事と比較して廉価である。さらに、弁護士をつけず個人でも提起することができる。しかし、個人で戦うにはそれなりの法律的な知識が必要になる。

短期で解決率が高いことは大きなメリットだが、和解金は月額賃金4~6ヶ月分程度が相場と言われている。迅速な解決を目的とする労働審判を選択したのであれば、一定の譲歩はやむを得ないと考えるべきだろう。本訴にも移行できるが、解決までの時間をどのように考慮するかがポイントだ。いずれにしても、労働審判は、3回で決着がつく。

会社はどのような手段をとるか

基本的には、なんらかの報復が待っていると考えるべきだろう。実際には、そのことを理由に報復をしてはいけないのだが、それは建前である。懲戒、異動、降格、賃金カット、あらゆることを想定しなくてはいけない。つまり、「いま」を解決する手段は限定されるということだ。会社を相手に争うわけだから、相当な覚悟が必要になるだろう。

個人的な見解だが、即効性を求めるなら労働組合が早い。数ヶ月待てるなら労働審判が得策だろう。労組に入会したら、すぐに会社宛にFAXと郵便が届く(団体交渉申入書)。この時点であなたに対するパワハラは無くなるはずだ。しかし、よほど、理解がない限り、その後、会社に残ることは難しいと覚悟しなければいけない。

「不当解雇」を争う裁判になるともっとややこしい。会社側にとって、解雇が無効となった場合には、解雇期間中の賃金(バックペイ)を払い、復職を認めなければいけない。会社側も復職させるリスクを考えるから「合意退職で解決するならバックペイは支払う」という流れになりやすい。いずれの方策をとってもかなりの感情的しこりは残る。

自分を客観視できますか

人事は専門的な分野なので経験がないとリアリティがないかも知れない。私の場合には、労使双方の経験があるので、どちらの言い分もわかるし対処方法も予測できる。もしまわりに人事経験者がいたら聞いてみるのも悪くない。外部の勉強会などに参加するのもいいだろう。「いま」を客観視するヒントを与えてくれる人を探すことをおすすめする。

この記事は、かなり労働者寄りの視点で構成している。しかし、言い分は各々にあることを忘れてはいけない。あなたに言い分があるように、上司にも会社にも言い分がある。それらをつき合わせれば、100%言い分が正しいということは滅多にない。だから、いまの状況にいたった原因に気づかなくてはいけない。

厚生労働省「人口動態調査」によれば、正月明けは1年のなかで3番目に自殺者が多いことが明らかになっている(1番が夏休み明け、2番が新年度直後)。さて、新年の仕事始まりに憂鬱な人はいないだろうか。結局は自分自身の環境を自らが客観視するしかない。

尾藤克之
コラムニスト

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