食べたいものも決められないメガ銀行

2018年01月16日 11:30

リスクアペタイトフレームワークは、2013年11月に金融安定理事会(Financial Stability Board)が公表した「実効的なリスクアペタイト枠組みに係る原則」(Principles for an Effective Risk Appetite Framework)において提示されたもので、金融機関としての健全なるリスクへの食欲、事業目的遂行のために自覚的にとるべきリスクを前面にだした経営の枠組みである。

金融庁は、2015年9月に公表した「金融行政方針」において、リスクアペタイトフレームワークについて、「自社のビジネスモデルの個別性を踏まえたうえで、事業計画達成のために進んで受け入れるべきリスクの種類と総量を「リスクアペタイト」として表現し、これを資本配分や収益最大化を含むリスクテイク方針全般に関する社内の共通言語として用いる経営管理の枠組み」と説明している。

メガ銀行においては、2014年度あたりから、リスクアペタイトフレームワークの構築がなされてきているが、形だけで中身なしといっても過言ではないのが現状である。では、中身の充実にとって、何が一番重要なのか。

リスクアペタイトフレームワークの中核は、金融庁が説明しているように、「自社のビジネスモデルの個別性を踏まえたうえで、事業計画達成のために進んで受け入れるべきリスク」の定義にある。「進んで受け入れるべきリスク」だからこそ、リスクに対する能動的な食欲が問題になるのである。

「金融の常識、世の非常識」とされる金融界では、「進んで受け入れるべきリスク」などといわれると新鮮なのだが、世の常識からいえば、どの事業においても、事業目的の遂行のためにとるべきリスクは必ず自覚的にとるのだから、「進んで受け入れるべきリスク」は、事業目的そのものとして、自明である。

ところが、メガ銀行のリスクアペタイトフレームワークの公表されている記述をみる限り、どこにも、能動的に「進んで受け入れるべきリスク」の具体的記述はない。そこに書かれていることは、現に受動的に受け入れているリスクの管理態勢にすぎないのであって、その管理態勢のあり方を、リスクアペタイトフレームワーク上の用語により、リスクカルチャーの醸成と呼んだところで、せいぜい、技法上の改善にとどまることであって、本質的なガバナンスの改革にはならない。

金融庁は、事業目的の再確認を前提として、「自社のビジネスモデルの個別性」といっているはずだが、メガ銀行の公表されているリスクアペタイトフレームワークからは、ビジネスモデルの個別性、即ち、事業目的における差別性をみてとることはできないのである。さても、日本のメガ銀行の場合、ビジネスモデルの個別性など、考え得ないのであろうか。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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