東京都のシッター代補助を、成功に導くためには?

音喜多 駿

こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

年末から報じられている通り、知事査定による次年度予算の目玉政策の1つとして、「シッター代の補助」が発表されました。

ベビーシッター代 月28万円上限に補助へ 東京都(NHKニュース)

「認可保育所というハコだけではなく、起動的なベビーシッターに補助を出すべき

というのは私もかねてから継続的に主張してきた政策であり、初めて選挙に出る時に一番に上に掲げた政策も「アシスタント・マテリネル」と呼ばれるフランスのベビーシッター制度を参考にした待機児童対策でした。

子育て支援政策をフランス流へ

都道府県レベルでは異例の措置として、ベビーシッター代の補助に踏み出した小池知事の決断は素晴らしく、率直に賞賛したいと思います。

保育所に入れなかった、あるいはライフスタイルとして保育所の開所時間にそもそも合わないなどの事情がある方々に、ダイレクトで届く支援になるはずです。

試み自体は文句なく素晴らしい一方で、詳細な制度設計はまだこれからということですから、効果を最大化するためにいくつか課題を整理しておきたいと思います。

やはり何より、「利便性と質の両立」がポイントです。

現状では1時間あたり1,000円を上限とした補助が検討されているようですが、都内で時給1,000円以内でシッターを雇うことは極めて困難なので、フルタイムで働くとなればかなりの部分が「持ち出し」となります。

なんとかリーズナブルなシッターさんを自力で探せれば…と考えても、質の担保の観点から、こちらも現状では「全国保育サービス協会」に登録されている団体・個人シッターに限定することが検討されているようです。これは国が現在行っているスキームと同様ですね。

そうするとやはり、協会による質の担保がされている反面、利用できるシッターの数が限られたり、高額になるデメリットが生じます。

協会の厳しい登録基準が、そのままコストとしてシッター時給に反映されるからです。

もちろん、以前にベビーシッターのマッチングサイトで痛ましい事件が起こったことから、「質の担保」が重要視されねばならないのは当然のことです。

とはいえ、最近では協会に加入していない事業者・団体でも、本人確認や保険付与がしっかりと行われ、利用者間のやり取りもシステムで保存されるなど、管理体制が整っているところは存在します。

こうした団体はシッターと利用者が直接やり取りができるところが中心で、手配のやり取りに仲介が入らない分コストが安くなったり、また「子どもが夜に熱を出して、翌朝から来てくれる病児シッターを…!」という緊急案件にも対応しやすいというメリットもあります。

どこに線を引くのかは非常に難しい問題で、国と同様の基準で「協会加入」を条件とするのが行政にとって最も合理的でリスクの少ない判断になることは理解できます。

ただせっかく作った制度が、「自己負担が大きくて使いにくい」「制度が使えるシッターが見つからない」という理由で利用されず、失敗に終わってしまうことは避けなければなりません。

この制度を利用するために都に対して独自の届け出や情報開示義務を負わせることで、協会未加入団体・個人シッターであっても安全性を向上・確保する方向も、検討の余地があるのではないでしょうか。

 

区市町村が独自に行っている助成の対象範囲なども、参考になるはずです(協会加入が条件とは限らないので)。

実際にベビーシッターを利用している方々のニーズを調査しながら、利便性と質を両立した制度設計が試みられることを期待したいと思います。

私も本件については、最適な制度をどのように構築していくのか引き続き調査研究を進め、提言をして参ります。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は東京都議会議員、おときた駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年1月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。