【映画評】目撃者 闇の中の瞳

2018年01月15日 06:00

2007年。新聞社の実習生シャオチーは、ある嵐の夜、台北郊外の山道で高級車同士の当て逃げ事故を目撃する。シャオチーはとっさに犯罪現場とその場から逃走した車の写真を撮るが、その写真がボヤけているという理由で記事にはならず、犯人もつかまらなかった。それから9年後、敏腕記者になったシャオチーは、買ったばかりの中古の高級車が、9年前に目撃した事故車だったと知り驚く。シャオチーは先輩記者マギーの協力を得て、事故の真相を調べ始めるが、それ以降、シャオチーの周囲では不可解な出来事が起こり始める…。

ある交通事故にまつわる謎とその先に待つ恐ろしい真実を描く台湾発のサスペンス・スリラー「目撃者 闇の中の瞳」。主人公シャオチーが記者魂で粘り強く事件を調べるのだが、浮上する謎の数がハンパなく多い。現場から逃走した謎の加害者、事故直後に失踪した被害者女性、自分が撮った証拠写真の一部が削除された痕跡、逃走車の所有者として浮かび上がった意外な人物、すべての謎の周囲にうごめく不気味な影。さらに事故と同じ日に発生した身代金目的の幼女誘拐事件も何やら関わりがある様子。これだけ謎や伏線があるとその回収に苦労しそうだが、ことごとく予想外の方向から真相が浮き彫りになっていくので、一瞬も気が抜けない。シャオチーが簡単に重要ポイントにたどりつくなど、時にはご都合主義もあるのだが、尋常ならざる緊張感の持続で突っ走ってしまう。

台湾映画といえば、歴史を通じて台湾人のアイデンティティーを追求した巨匠ホウ・シャオシェンや、みずみずしい青春映画が得意のエドワード・ヤン監督の作品群が思い浮かぶ。サスペンスやミステリーは時々登場するが、その印象は薄かった気がする。だが、本作はそんな思い込みをあっさりと覆してくれた。事故車にまつわる謎で、これはもしやホラー映画?と思わせておいて、すぐに物語は陰謀めいたミステリーへと変わる。そこで真犯人の解明と華麗な謎解きならば普通なのだが、本作はそこからの“飛躍”がすごい。そこには、想像を超える恐ろしい闇が広がり、人間が持つどす黒い欲望が露わになる。現在進行形の謎解きと回想シーンが巧妙に入り乱れるストーリー展開、手持ちカメラのリアルな映像が、観客をいやがおうでも“目撃者”にするのだ。一筋縄ではいかないエンタテインメントを作ったのは、これが長編第2作となるチェン・ウェイハオ監督。この人の名前は憶えておこう。
【75点】
(原題「目撃者/WHO KILLED COCK ROBIN」)
(台湾/チェン・ウェイハオ監督/カイザー・チュアン、ティファニー・シュー(シュー・ウェイニン)、アリス・クー、他)
(悪夢的度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年1月14日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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