今年のびっくり予想?米国の長期金利の3%台回復

久保田 博幸

10日の米10年債利回りは一時2.59%まで上昇した。これは9日に日銀が超長期ゾーンの国債買入を減額したことで、日銀も正常化路線に向きを変えてくるのではとの思惑で米債売りを誘い、それに加えて、中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報じられたことで米10年債利回りは2.6%近くに上昇した。

日銀が超長期ゾーンの国債買入を減額したのは正常化ではない。日銀の緩和策において、量の追求が厳しくなったことで、政策目標を金利に変更し、量の買入も長期化出来るように調整しているともいえる。

15日の日銀支店長会議の挨拶でも、黒田総裁は「金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。」とこれまでの発言内容を繰り返している。

ただし、ECBも量的緩和の修正を検討するなどしており、原油高を受けて物価のさらなる上昇も予想される。このため市場では日銀による金融政策の正常化も今後は意識せざるを得なくなるとみられ、今回の米債の下落はそれがきっかけかと思われる。

中国当局が米国債の購入縮小もしくは停止を検討していると報については中国当局が否定コメントを出している。

このため、米10年債利回りが一時2.6%近くまで上昇した材料そのものはそれほどインパクトのあるものではなかった。ただし、2.6%という水準は実は節目にあたり、この水準に接近したことに意味があった。

米10年債利回りは昨年3月に一時2.6%台に上昇したが、それ以降は低下基調となり、昨年9月に2%近くまで低下した。その後再び上昇基調に転じて2.6%に接近したのである。チャートからは2.6%を抜けてくると次の節目は3%までない。

FRBはすでに正常化を進めており、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は1.25~1.50%まで引き上げている。しかし、米10年債利回りは2.6%以下の水準で推移を続けるなど米10年債利回りにはそれほど上昇圧力は加わっていない。これは物価がFRBの目標水準まで上がっていないことなども要因となっていようが、その物価についても世界的な景気拡大によって、今後さらに上昇圧力が加わる可能性がある。そうであれば今年の米10年債利回り(米長期金利)は2.6%近辺を上抜けて、3%を目指す可能性はありうると見ている。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。