バロンズ:政府機関の閉鎖について、投資家が知っておくべき事実

2018年01月22日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは前回に続き半期に一度行う金融市場の重鎮9名によるラウンドテーブルを掲げる。前回は米国経済全般、金融政策、米株相場を予想してきたが、今回はそれぞれの推奨銘柄を紹介。サムスン電子のほかスターバックス、メットライフ、グラブハブ、ベイル・リゾーツ、エネルギー・セレクト・セクターSPDRなどを挙げた著名投資家、ストラテジストは誰なのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は政府機関の閉鎖を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

政府機関閉鎖に関する投資家向けガイド—An Investor’s Guide to the Shutdown.

米連邦政府機関は19日から日付が変わる20日の午前0時過ぎ、議会がつなぎ予算を可決できなかったため閉鎖に追い込まれた。下院で通過した予算案は上院で60票を獲得する必要があったものの、民主党がドリーマー(幼少期に親に連れられて米国へ不法入国した者)の強制送還に猶予を与える法的措置の延長を求め、政府機関の閉鎖が余儀なくされた。

ただワシントン関係者を除き、政府機関の閉鎖は遠く離れたところで起こった出来事のように扱われている。金融市場も同様であり、米株高は前週半ばに小休止した程度で、まだ過去最高値更新の勢いを保つ。それもそのはずで、JPモルガンのマイケル・フェローリ主席エコノミストが指摘するように、1977年から過去18回を数える政府機関の閉鎖の影響は、経済指標にほとんど現れたことがない

経済への影響が限定的な背景の一つは、一部の政府機関のみ閉鎖されるためだ。防衛費、金利支払い、社会保障の義務的支払い、メディケア(高齢者向けの公的医療保険)、その他の警察のような法的執行機関といった「必要不可欠な」機能は閉鎖対象とはならない。政府機関の閉鎖を受け自宅待機となる政府職員は遡って給与が支払われるため、休暇同然だ。唯一影響として現れるのは経済指標の発表であり、26日発表予定の米10〜12月期実質国内総生産(GDP)成長率のリリースは遅れる可能性が高い

米株相場への影響も限定的で、過去を振り返れば政府機関の閉鎖を上手く切り抜けてきた。センチュリー・マネージメント・インベスト・アドバイザーズのジェームズ・ブリリアント共同最高投資責任者(CIO)いわく、S&P500は過去18年間の政府機関閉鎖の間に平均14.24%の上昇を遂げてきた。政府職員の自宅待機を巻き込んだ過去7年間での政府機関閉鎖でも、平均のリターンは15.56%の上昇を示す。つまり、メディアの政府機関閉鎖の扱いはセンセーショナルで短期的なボラティリティの上昇をもたらす可能性が高いものの、投資家は安心して眠ることができるというわけだ。

もちろん、政府機関の閉鎖がどれだけ投資家の見通しをしぼませるかは分からない。投資家の強気・弱気度を測る調査で知られるインベスターズ・インテリジェンスの最新の結果では、強気派が66.7%と1986年4月以来の最高を遂げ、弱気派は12.7%と前回の13.5%を下回った強気派と弱気派のスプレッドは1986年以来で最大となるわけだが、ブリークリー・フィナンシャル・グループのピーター・ブックバール最高投資責任者(CIO)によれば、これはダウ平均が向こう5週間に5%下落する可能性を示すという。前週、S&P500は5%の下落を経験せずに過去最高値を更新し続ける記録にあと1日へ迫った。

為替でもセンチメントは一方向へ傾き、政府機関の閉鎖もドル安に拍車を掛けた。ドル・インデックスは90.67で取引を終え、90台割れが迫っている。ドル・インデックス比率の半分以上を占めるユーロが、対ドルで上昇したためだ。おかげで投機筋によるシカゴIMM先物ポジションでユーロの買い越しが過去最高を記録したが、短期的に見通しは明るくないだろう。センチメントが過剰に強気方向に傾く一方で、欧州中央銀行(ECB)から特に競争力の弱い周縁国の当局筋からユーロ高を警戒する発言が聞かれるようになった。独DAX指数も米株が過去最高値を更新し続ける陰で足元はレンジ相場が続いている。

恐らくドルの弱気を最も明確に表しているのは、ビットコインやその他の仮想通貨の大流行だろう。取り残されているのは、ストラテガス・セキュリティーズのジェイソン・デ・ソナ・トレナート氏が「アナログ・ビットコイン」と呼ぶゴールド、金だ。

トレナート氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ他中銀の金融緩和政策がインフレを引き起こすとの自身の予想が外れたと認めた上で、富める者が富み、貯蓄口座を持つ中低所得者層の所得が低下する結果をもたらしたと指摘する。ただし同氏は、Fedの金融政策と政権側の規制緩和を通じた信用拡大を背景に、現状は物価上昇につながりやすい状態だという。ストラテガスの別のアナリストによれば、ニューヨーク地区連銀が発表する基調的インフレ率(UIG)の一つは3%に迫る水準(筆者;後述)にあり、Fedのインフレ目標値2%の1.5倍に相当する。金先物もテクニカル的に上抜けの可能性が芽生え、19日に1,331.90ドルと6ヵ月ぶりの高値で終了した。

NY地区連銀のUIGの推移。

nyuig
(作成:NY連銀を基にMy Big Apple NY)

金先物の上昇は、トレナート氏いわく「金先物の動向は米国の金融システムに歳入でやりくりするよう伝えているかのようだ」。20兆ドルに及ぶ連邦政府債務は歳出そのものへの問題を浮かび上がらせるだけに、トレナート氏はニューモント・マイニングやロイヤル・ゴールド、ブエナベンチュラ・マイニングなどの個別銘柄を推奨する。


政府機関の閉鎖を前に、19日の米株相場は極めて落ち着いた推移でしたね。2013年の例で言うなら、政府機関の閉鎖があったにも関わらずS&P500は30%ものリターンを挙げていたので、不安視していなかったのでしょう。筆者は最新である1月分のベージュブックで示されるように、インフレは上向きつつあると考えていますが、NY連銀が公表する基調インフレを合わせたインフレ率は本文にある通り、上昇中。特にfull data setと呼ばれるマクロ経済と金融の変数を取り込んだインフレ率は、2017年12月に2.98%でした。

米経済が好調であるとはいえ、税制改革法案の成立を前に行われた調査で、企業の姿勢はそれほど賃上げに前向きではありませんでした。インフレ上昇局面では利鞘縮小を恐れ賃上げに踏み切るとは考えづらい。それでも平均時給の前年比が2.5%付近を確保できればFedは3月にも追加利上げを実施するのでしょう。2017年に個人消費が堅調だった理由は資産効果のほか低インフレによる実質所得の安定が寄与したと考えれば、貯蓄率が2007年末以来の低水準をたどる今、個人消費が加速するかは微妙と言わざるを得ません。

(カバー写真:NPCA Photos/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年1月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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