独社会民主党「大連立交渉」にゴー・サイン

長谷川 良

ドイツの第2党、社会民主党(SPD)は21日、ボンで臨時党大会を開催し、メルケル首相の「キリスト教民主同盟」(CDU)とその姉妹政党「キリスト教社会同盟」(CSU)の間で協議した大連立発足を巡る予備交渉の合意内容(28頁)について、その是非を問うた。結果、党代表642人中、賛成362人、反対279人、棄権1人で、賛成が過半数(約56.4%)を上回ったことから、CDU/CSUとの大連立交渉にゴー・サインを出した。CDU/CSUはSPD臨時党大会の結果を歓迎し、連立交渉を即開始し、2月中にも大連立政権を発足させたい意向といわれる。

大連立交渉にゴー・サイン(社民党臨時党大会で、2018年1月21日、ボン SPD公式サイトから

シュルツSPD党首は、「結束し、勇気を持って交渉に臨もう。強固なSPDはドイツと欧州を強くする」と檄を飛ばしたが、賛成が約56.4%に留まり、党内に大連立反対の声が依然、強いことが改めて明らかになった。特に、SPD青年代表ケビン・キューナルト氏は、「将来巨人に成長するために、今は小人に甘んじるべきだ」」と強調し、メルケル首相の大連立政権に参加すれば、ジュニア政党としてSPDはその存在感を失っていくと警告を発した。

シュルツ党首は大連立反対の党員を説得するために、今月12日、合意した内容に難民政策、雇用問題、厚生分野で追加要求を出す考えを表明したが、CSUのゼーホーファー党首は、「合意内容に追加要求を加える考えはない。SPDは合意内容を死守すべきだ」と指摘、SPDに警告を発している。同じく、CDU内でもSPDの追加要求については批判的な声が聞かれる。

ちなみに、ドイツ野党「左翼党」や極右政党「ドイツの為の選択肢」(AfD)からはSPDの連立交渉ゴーに対し、「歴史的な間違い」、「威厳のない、信頼できない決定」といった辛辣な批判の声が出ている。

ドイツでは昨年9月24日の連邦議会選(下院)後、メルケル首相のCDU/CSUは自由民主党(FDP)と「同盟90/緑の党」とジャマイカ連立政権の発足を目指したが、FDPが「党の政策に反することはできない」として離脱。それを受け、ジャマイカ連立交渉は暗礁に乗り上げた。

総選挙のやり直しを懸念するシュタインマイヤー大統領は政党代表を大統領府(ベルビュー宮殿)に招き、政権発足を促した。その結果、総選挙直後「下野する」と宣言してきたシュルツSPD党首はメルケル与党との連立交渉に応じることを決意。それを受け、社民党幹部会は昨年、CDU/CSUとの大連立の予備交渉を承認し、今月7日から交渉を重ね、合意を達成した経緯がある。

SPDは昨年9月の総選挙で得票率20.5%(前回比で5.2%減)と党歴代最悪の結果だったことから、党内では野党に下野して党の刷新に取り組むべきだという声が支配的だった。

CDU/CSUとの大連立交渉で合意が達成された場合、SPDは全党員(約44万人)にその是非を問う方針だ。そのため、大連立政権が土壇場で拒否される可能性はまだ排除できない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。