憲法改正で統治機構改革をどこまで織り込めるか

憲法問題の質疑があった二階幹事長記者会見(自民党公式サイトより:編集部)

自民党の憲法改正発議案は3月の党大会の直前には確定するのだろうが、自民党の改憲4項目の中で意味のありそうなのは、自衛隊の明記を内容とする憲法9条の改正くらいで、「教育の無償化・充実強化」も「緊急事態対応」も「参議院の合区解消」も大した問題にならないような気がしている。

教育の無償化・充実強化はそれなりに国民にアピールしそうだが、憲法に書き込まなければならないほどの問題か、と言えば、どうもそれほどのことはなさそうだ。

まあ、国の重要施策の一つでしょうね、という程度のことであって、教育の無償化についてはどこまでの範囲で実施するか、そのための財源をどこから調達するか、等の諸問題を考えると、その時々の財政事情や時の政府の判断に任せておいた方がよさそうですね、ということになりそうだ。

緊急事態対応も、緊急事態条項を憲法の明文に追加すべし、という議論になったら、まず大方の国民の同意を得られなくなりそうだから、止めておけ、ということになる。

精々が国会議員の任期の特例を認めたり、国会議員や地方議会議員の選挙の特例や国会の召集手続きの特例を定める程度に終わりそうである。

参議院の合区解消問題も物が小さ過ぎて、どうも今の段階での憲法改正のテーマとしてはアピールしない。

衆議院と参議院を統合して一院制国会に変える、とか、議院内閣制を大統領制に変更する、首相公選制を導入する、都道府県・市町村制を廃止して道州制に変更する、内閣による衆議院の解散権行使の要件を明記する、衆議院議員と参議院議員の任期を同一にし、それぞれ半数改選にして政治の安定性と継続性を目指す、政党についての規定を憲法に明記する、首都を東京都、副首都を大阪府と明記し、首都・副首都の整備の必要を憲法に書き込む、等々の統治機構改革をどうして国会議員の皆さんは議論しないのかな、というのが私の問題意識である。

自民党の改憲4項目は大して魅力がないな、と言わざるを得ないが、自民党と公明党が本気になれば憲法改正の発議は出来るようになるはずだ。

自民党ではまもなく本格的な議論が始まるようだが、さてその他の政党の皆さんはどうされるのか。

安倍内閣の下での憲法改正は絶対認めない、内容如何に関わらず反対!という態度を表明されておられる方々は細かい憲法改正論議には参加されないのだろうから、結局は自民党の中でどれだけ周到な憲法改正案が練られてくるかに掛かっているのだろう。

まずは、自民党の国会議員の皆さんのお手並み拝見、というところか。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。