総理が施政方針演説で資源管理に言及!水産業改革「勝負の年」

2018年01月24日 11:30

1月22日、通常国会が召集され、安倍総理の施政方針演説が行われました。45分間の演説だったのですが、私自身、嬉しさと改めて覚悟を決める想いで、拳を握りしめた瞬間が2回ありました。

首相官邸ホームページより

1つは、「通信と放送が融合する中で、国民の共有財産である電波の有効利用に向けて、大胆な改革を進めてまいります」という一文です。電波制度の改革は昨年、自民党の行政改革推進本部と政府の規制改革推進会議がそれぞれ提言を行い、本格的に動き出したことはすでに書きましたが、電波改革について個別具体的に総理の施政方針演説で言及されることは歴代の内閣でも異例のことで、総理の強い意欲を感じます。

もう1つは、水産改革です。同じ一次産業でも農業に比べ、水産業の改革は手付かずでしたが、これも施政方針演説に盛り込まれたこと自体が異例のことでした。それがどういう中身で、この国の水産業改革はどう進めるべきなのか。ちょうど同じ日に、東京海洋大学で開催された「水産業の未来を漁師と一緒に考えるシンポジウム」でお話しましたので、あらためてその要旨だけブログでも共有させていただきます。

なお、シンポジウム当日の東京は、4年ぶりの大雪警報でしたが、悪天候にもかかわらず会場には100人ほどの漁業関係者、研究者の方々が参加されました。最後までご清聴いただき、ありがとうございました。

基調講演:水産改革でなにを目指すのか(要旨)

今年は水産業改革にとって「勝負の年」。今日の国会でそのことが証明されました、安倍総理の施政方針演説をご紹介します。

我が国を取り巻く広大な海にも、豊かな恵みがあります。漁獲量による資源管理を導入し、漁業者による生産性向上への創意工夫を活かします。養殖業へ新規参入が容易となるよう、海面の利用制度の改革を行います。水産業改革に向けた工程表を策定し、速やかに実行に移してまいります。

総理は明確に「漁獲量による資源管理をやる」と表明したのです。これまで総理の演説で水産業に触れたことはほとんどありませんでした。5年間、多くの同志と一緒に世論喚起をして、政治の場でも頑張ってここまで来ることができました。

では、水産改革でなにをやるべきか?先に結論を提示します。

1つは水産業の根幹となる漁業法に「水産資源は国民共有の財産だ」としっかり書き込むことです。日本の法律に「水産資源は国民共有の財産である」と一言も残念ながら書かれていないのです。

世界ではどうでしょうか。国連の海洋法条約には「人類共同の財産」と明記。EUでは「我々の共有財産」、アイスランドは「国の共有所有」、ブラジルに至っては憲法の中で「政府の資産」など、それぞれ書かれています。日本でも海洋基本法で「海洋が人類共通の財産だ」、水循環基本法で「水が国民共有の貴重な財産」とそれぞれ記載。「資源を守り持続可能な漁業を営んでいこう」という考えが世界ではスタンダードになっています。

2つ目は、トレーサビリティーの導入です。これが一番重要と思っていますが、日本では水産に関するトレーサビリティー法は制定されていません。今後、水産業の発展には、水産物の高付加価値化が必須です。そのためには、どこで誰の手によって獲られて、どう加工されたのかなど、ストーリーを伝えていく必要があります。そして、すべての漁獲が「見える化」されれば、資源管理も容易に可能です。同様の法律はEUにありますし、日本でも牛肉と米にはあります。

3つ目、本丸は資源管理の手法です。日本はインプットコントロールとテクニカルコントロールに終始をしてきました(図参照)。総理の施政方針演説にもありましたが、今回を機に漁獲量によるアウトプットコントロールに移行することが重要です。日本はプロセス規制が多いのですが、プロセスの細々としたところに手を入れるのではなく、アウトプットのところで基準を設けることにより、手法は自由に任せるので基準はクリアしてください、とやるほうが、事業者の創意工夫も生まれます。

4つ目はTAC(全体の漁獲枠)・IQ(個別割当)の拡充強化。TACは7魚種に指定をされていますが、24魚種をTAC対象にできれば日本の水産物の9割をカバーできます。水研機構によれば、TACを設定するためのデータはあるようなので、あとは政治の判断です。TACの設定により漁獲上限が決められれば、まず獲りすぎるということはなくなります。あとはその中で漁獲可能量を船ごとに割り振るIQを実現することができれば、収入の安定と将来の予見性が高まり、漁業の構造を持続可能なものに変えることができます。

そして最後に、資源回復を目的とした休漁に対する補償制度の創設です。

数年漁を休むと魚は増えます。ですから、奨学金のように休漁する3年分を補償するから「将来魚が増えて収入が増えたら返す。もし増えなかったら返済不要。」という仕組みにしてはどうでしょうか。

水産改革が停滞してきた構造を一緒に変えたい

最後に、なぜこんなに水産の改革がほったらかしにされてきたのか、そしてそれを変えるために皆さんと何をしたいのか、お伝えしたいと思います。

過去にも、水産庁は資源管理に取り組もうとしたことがありました。しかし、規制しようとすれば、漁業者が反発し、政治家がその声に押されて規制に反対する。このような関係が続いてきたため長く膠着していました。しかし、これからは政治がむしろ「資源管理をやるべきだ」と水産庁の背中を押す、漁業者を一緒に説得し前進していくということをやっていかねばなりません。そのためには一部の声の大きな存在に負けないように国民から後押しの声が必要です。

だからこそ、皆さんに今年1年、本気で改革に取り組む政治家を応援したり、世論形成のためにメディアに発信をしていただきたいのです。

もう1点は、生産者、流通業、消費者の関係。流通業に対して選択権のある消費者がいいものを選び、流通業がいいものを生産している人たちを選ぶという好循環をつくることです。

総理が施政方針演説で決意を示した今年が、持続可能な水産業への転換のラストチャンスだと思っていますので、ぜひ皆さんの力を貸してください。


編集部より:この記事は、総務政務官、衆議院議員の小林史明氏(広島7区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2018年1月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林ふみあきオフィシャルブログをご覧ください。

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小林 史明
総務政務官、衆議院議員(広島7区、自民党)

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