【映画評】ガーディアンズ

渡 まち子

冷戦下のソ連。違法な遺伝子操作で生み出された特殊能力を持つ兵士による、超人部隊が作られようとしていた。しかし、名声を求める科学者のクラトフが裏切り研究所を爆破、超人たちも忽然と姿を消してしまう。50年後、自分も超人となったクラトフがロシアの崩壊を画策。その時、世を捨てて生きてきた4人の超人たちが再び集められる。クラトフを倒し、自らのアイデンティティーを取り戻そうと“ガーディアンズ”という名のチームを結成し戦うことを決意する4人だったが…。

ロシア発のSFアクション大作「ガーディアンズ」は、全編これ、マーベルのスーパーヒーローものと見紛う作りだ(パクリとも言う)。特殊能力を持つスーパーソルジャーを作り軍事利用するという計画は、ドイツ、ソ連、アメリカなど大国には実在したとか。そんな怪しげな裏歴史を思うとロシア版「X-MEN」、あるいはロシア版「アベンジャーズ」のような本作も、何やらちょっぴり現実味を帯びる(ような気がする)。メンバーは、獣人化した天才科学者アルスス、念動力で鉱物を操る怪力の賢者レア、超音速を誇る剣の達人ハン、擬態化能力を持つ美女戦士クセニアの4人だ。

カザフスタン出身のハンがアジア系の顔立ちだったり、シベリア出身のアルススが変身する獣が熊だったりと、随所にロシアらしさが盛り込まれている。超人チームの一人は必ず、動物、植物、炎などの非・人間系なのはお約束だが、獣に変身しても、金属の爪を持つウルヴァリンになるわけではなく、単なる普通の熊(ただの熊でも十分に強いのは分かっているが…)なので「それでいいのか?!」と心の中で大いに突っ込んだ。「自分の中の熊の部分が…」と真剣に悩む姿も何やら笑える。ド派手だが何となくあか抜けないVFXも、飛躍するストーリーも、ギャグすれすれの超人能力も、すべて珍味。だがそれでも、いや、だからこそ予想外に楽しめたのも事実だ。意味深なラストを見ると、もしかして続編があるのか?!いろいろと期待と不安が入り混じるロシア発のSFアクションだ。亜流で片付けるには、ちょっと惜しい。
【60点】
(原題「ZASHCHITNIKI/THE GUARDIANS」)
(ロシア/サリク・アンドレアシアン監督/アントン・パンプーシュニー、サンジャル・マディ、セバスティアン・シサク、他)
(珍作度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。