事務所を構えただけでは依頼者は来てくれない!

弁護士数が増加したため、「食っていけない」弁護士が急増しているようです。

毎月届く日弁連の機関誌「自由と正義」を見ると、自主的に退会していく弁護士が毎月数十名にも登ります。

給料を貰えず間借りだけする「ノキ弁」というのも増えているそうです。私自身、司法修習を終えてすぐに独立開業した「ソク弁」ですが、開業したての頃は本当に暇でした。

全く電話が鳴らないので、電話機が故障しているのかと疑ったくらいです。備品を揃えて毎月の賃料(住居のアパートの方も)を支払わなければならないので、資金繰りが大変でした。

幸い、家内が事務員をやっていたので、人件費は払わなくて済みしたが・・・。

当時の「法律新聞」(?)の「弁護士会に望むことは?」という新米弁護士アンケートに、「弁護士費用をもっと安くして欲しい」と答えたのは(掲載された中では)私だけでした。

黙っていても依頼者や相談者はやってきません。私は毎日のように、営業に回りました。

税理士さん、司法書士さん、行政書士さん、その他隣接分野の士業の事務所を回って、「この度法律事務所を開業した荘司と申します。何卒よろしくお願い申し上げます」と頭を下げて回ったのです。

銀行員時代に個人営業の経験があるので全く苦にならず、近場から次第に範囲を広げていきました。

市役所とか○○組合とかいう組織も回りました。

開業の挨拶は葉書にしました。当時、開業や独立の挨拶は重厚な封書で行うのが慣例でした。私があえて葉書にしたのは、費用節約と開封の手間を省くのが目的です。封書より葉書の方が、同じ費用でたくさんの相手に出すことができます。

また、封書だと他のDMと一緒にそのままゴミ箱行きになるおそれがありますが、葉書だととりあえず目を通してもらえます。

そこそこ名の通った会社の方とお目にかかると、「顧問契約をお願いできませんか。(当時存在した)報酬規定では月5万円となっていますが、金額はご無理のない範囲で結構です。電話一本でどのようなご相談にも迅速に回答いたします」と、セールストークを述べてきました。

後日、「自由と正義」を見ていたら、「どうやって顧問先を増やすか?」というような対談特集があり、「顧問先になって下さいなんて口が裂けても言えないよな」「そうだよな~(笑)」という記述を見て、もしかしたら自分はとてつもなく非常識なことをしているのではないかと思ったものでした。

このような営業活動が功を奏したのかどうかはわかりませんが、数ヶ月後からポツポツ相談者や依頼者が訪れ、はたまた顧問先もできるようになりました。

今の弁護士過剰時代は、おそらく誰もがやっているでしょうから参考にはならないかもしれません。

ただ、事務所を構えてネット広告を出せば「いずれ依頼者が来てくれる」と考えている人がいるとしたら、すぐに営業活動を開始しましょう。

まずは事務所の周囲から始めれば、地の利を生かせると思います。かつては「口が裂けても言えない」と言われた、「顧問先のお願い」も積極的にやりましょう。

なっていただいたら、ムダ金を使わせる訳にはいかないので、積極的に情報提供したり課題の掘り起し等で貢献しましょう。(各人の価値観にもよりますが)別費用をもらうというセコイことは、私は一切やりませんでした。

今から振り返れば、訴訟も(印紙代や郵券代という実費は別として)全部顧問料の範囲でやっていました。

安定収入ほどありがたいものはありませんから。

司法試験の合格や司法修習の終了は目的達成では決してありません。新たなスタートラインです。

新米として営業に励みましょう!

本当にあったトンデモ法律トラブル 突然の理不尽から身を守るケース・スタディ36 (幻冬舎新書)
荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。