【映画評】不能犯

2018年02月03日 06:00
(C)宮月新・(ハンカク中黒)神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

(C)宮月新・(ハンカク中黒)神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

大都会を舞台に次々と不可解な変死事件が発生する。検死をしても何一つ証拠が出てこないそれらの事件には、決まって黒衣に身を包んだ宇相吹正(うそぶき ただし)という謎の男の姿があった。ある電話ボックスに殺人の依頼を残すと、宇相吹は、事故や自殺にみせかけて確実にターゲットを殺害する。警察は宇相吹の身柄を確保し任意で取り調べを始めるが、犯行は立件できず“不能犯”とされる。相手を見つめ話しかけるだけで相手を死に追いやる宇相吹だったが、刑事の多田友子だけは彼のマインドコントロールが効かないことが判明する…。

(C)宮月新・(ハンカク中黒)神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

(C)宮月新・(ハンカク中黒)神崎裕也/集英社 2018「不能犯」製作委員会

相手を死に追いやりながら立証不可能な犯行を繰り返す男の暗躍を描く異色サスペンス「不能犯」。原作・宮月新、作画・神崎裕也の大人気コミックが原作だ。タイトルの不能犯とは、目的は犯罪だが、常識的に考えて実現不可能な行為なので、罪に問われない。謎の男・宇相吹が行うマインドコントロールは、思い込みや先入観を利用するもので、専門用語でプラシーボ効果(別名、偽薬効果)と呼ばれるものだ。宇相吹とはいったい何者なのか?という疑問より、物語では彼に殺人を依頼する人々の殺意の純度と動機が問われる。愛、憎しみ、欲望、嫉妬が原因での殺人はブラックで皮肉な結果を伴い、宇相吹の「愚かだね、人間は」という決めゼリフへとつながる仕組みだ。

そんな宇相吹だが、唯一、彼がコントロールできない女刑事・多田に出会ったときは、なぜか嬉しそうな顔をするのが面白い。彼女は口は悪いが正義感で人情味があり、何より人間が持つ“善”を信じているのだ。「あなたなら僕を殺せるかもしれませんね」という静かなつぶやきは、人の心の闇を見すぎた宇相吹の、絶望と狂気の産物だ。主人公を演じる松坂桃李は、最近、単なるイケメン俳優ではないことをその挑戦的な役選びで証明しているが、本作はハマリ役。ダークヒーローを気持ちよさそうに怪演していて、興味深い。
【60点】
(原題「不能犯」)
(日本/白石晃士監督/松坂桃李、沢尻エリカ、新田真剣佑、他)
(ブラック度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年2月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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