バロンズ:ダウ666ドル安、ブラック・マンデーとの相違点とは

2018年02月05日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは同誌が選ぶ地球環境、社会、人に持続可能な発展をもたらす、サステナブル企業ランキングを掲げる。時価総額ランキングなどと違ってFANGが上位を占めることはなく、5位からHP、4位にインチュイット、3位にべスト・バイ、2位にセールスフォース、1位にシスコ・システムズが入った。今回のランキングの基準、その他の順位など、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するコラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は米株急落にスポットライトを当てる。抄訳は、以下の通り。

唸りを上げたリスク—Risk Roars Back

1987年のパーティーの再演か?2月2日にダウが600ドル以上も急落した事実は、1987年の10月19日のブラック・マンデーを彷彿とさせる。

当時、利上げを続ける米連邦公開市場委員会(FOMC)につれ長期金利が上昇し、税制改革法案の成立で財政面が圧迫されつつあった。その裏でドル安が進行、貿易赤字拡大をめぐり緊張が走っていた。さらにレーガン政権は、イラン・コントラ事件に直面していたものだ。

歴史は繰り返すのではなく韻を踏むものだが、2月2日の666ドル(正確には665.75ドル安)の急落劇は2.5%安を示したに過ぎないのであって、ブラック・フライデーの22%とは一線を画す。バリューエションも大違いだ。S&P500構成企業の株価収益率(PER)は1987年当時、20倍を超えていたが。足元は18倍に過ぎない。米30年債利回りも1987年には10%に達し、割高な米株からのアロケーションのリスクが迫っていた。

それでも、2月2日の急落とブラック・フライデーには共通点がある。長期金利は上昇し、米30年債利回りは10%ではないにしても3%台に乗せ米10年債利回りは2.85%と約4年ぶりの高水準をつけた。米株の急落は、いかに低金利に支えられていたかが伺えよう。

確かに、米株は2月2日に急落した。しかし、S&P500でみれば過去最高値を3.85%下回る程度で、1月まで10ヵ月もの長きにわたって続伸し、1959年の11ヵ月続伸の記録に次ぐ状況である。ダウとナスダックも、最高値からそれぞれ4.12%、3.53%離れた程度だ。

ダウ、666ドル安を経てもまだまだ高値圏をキープ。

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(出所:Stockcharts)

上昇し続ける米株のお陰で市場関係者のセンチメントは強気モードへ傾き、インベスターズ・インテリジェンスの調査では弱気派が32年ぶりの低水準となる12.6%まで低下したと同時に、強気派は66%と32年ぶりの高水準を遂げていた。世間も同じように強気一辺倒だったようで、消費者信頼感指数の株高見通しも1987年に調査を開始して以来で最高を記録。ミシガン大学消費者信頼感指数でも、回答者の66.1%が今年の米株高を予想していた(なお調査開始は2002年)。

投資の世界では危険な言葉だが、1987年当時と足元では必ずしも良いことではないものの異なる点があり、”今回は違う”と言えそうだ。JPモルガンでグローバル・マーケット・ストラテジストを務めるニコラオス・パニギルゾグロウ氏いわく、米株と米債の負の相関関係が終焉に向かいつつあるという。例えば米株が下落した時に米債は上昇し、その逆も然りで、米債は米株などリスク資産のヘッジとして地位を確立し、多くの投信がリスク・パリティ戦略を採用するようになった。しかし、米株と米債が同じ方向に進んだ場合、ボラティリティが高まり、デレバレッジつまり売りが膨らむことになる。過去の例で言えば、2013年の5〜6月のテーパー・タントラムが思い出されよう。パニギルゾグロウ氏によれば、急激なリスク外しの影響でリスク・パリティ戦略を採用する投信は約10%も下落したという。2015年10〜11月に独債利回りが急伸した当時や、米大統領選の直前に米債利回りが上振れした当時も、同投信は4%落ち込んだ。

Fedが利上げと資産圧縮を通じ、金融政策の正常化の過程にある点も重要だ。海外では、欧州中央銀行(ECB)が2018年から資産買入額を600億ユーロから300億ユーロへ縮小させる。日銀は資産買入を継続しイールドカーブ・コントロールも続いているが、10年債利回りが上昇してしまった。言い換えるなら、債券市場は株式市場を支援する役割を果たさなくなってきたというわけだ。米国ではFedが金融政策を正常化しているため、米債利回りの低下に頼れない

ダウが600ドル以上も急落したのは、2000年以降で今回を含め9回のみ。

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(出所:CNBC)

米1月雇用統計は、その事実を浮き彫りにした。非農業部門就労者数は前月比20万人を突破し、平均時給は前年比2.9%も上昇し2009年6月以来の高水準に並んだ。週当たり平均労働時間が34.3時間と、前月の34.5時間から短縮したにも関わらず、である(筆者注:週当たり平均労働時間と平均時給の伸びについては、悪天候が影響した可能性あり)。失業率も4.1%と、約17年ぶりの低水準を維持した。こうした内容を受け、一部の市場関係者は年内4回の利上げを織り込みつつある。

市場に広がる恐れは、Fedが過度に利上げを行い、米株と米債に打撃を与えることだ。過去を振り返ると、こうした傾向はFRB議長の交代時に多い。アラン・グリーンスパン氏が1987年8月にFRB議長に就任した約2ヵ月後、ブラック・フライデーが市場を直撃した。ベン・バーナンキ氏が2006年2月に着任した数年後には、サブプライム危機が米国を襲った。ジャネット・イエレン氏がFRB議長の椅子に座った2014年2月は、幸いにも何事も起こらなかった。

ジェローム・パウエル氏がFRB議長に就任するに際し、米株は過去最高値近くで推移し、経済は完全雇用の状態にあり、インフレは目標値の2%に向かいつつある。ダウが666ドル安という不吉な数字で引けたことを考えれば、イエレン氏はちょうど良いタイミングで任期切れを迎えたと言えよう。


2月2日の米株安は、ビットコインの急落とも無縁ではないのではと考えています。これまで米国では仮想通貨を”資産”と定義していたものの、日本の等価交換にあたる同種交換(like-kind exchange)が適用され、課税繰り延べが可能でした。しかし税制改革法案の成立により抜け道が塞がれ、キャピタルゲイン税が課税されるようになります。ニューヨークに在住する仮想通貨市場の投資家も、追徴課税を恐れリスク資産を売却せざるを得なかったと話していました。仮想通貨だけでなく、上昇気流に乗っていた米株も換金売りの対象だったといいます。売りが売りを呼ぶ展開になった背景が換金売りならば、弱気相場入りへのリスクは低いと言えそうですが、米債利回りの上昇に歯止めが掛からない限り緊張状態が続くのでしょう。ただし景気後退入りのリスクは低く、2016年2月と同様に下落しても10%程度である可能性を残します。

(カバー写真:Tripp/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年2月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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