東京は15年間「空き家率が11%で横ばい」のナゼ?

以前寄稿した『空き家問題は「善意」だけでは解決しない』でも触れたとおり、空き家問題のうち特に深刻なのは大都市圏「以外」で「賃貸又は売却の予定がなく、別荘等でもない長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅」の空き家が増加している事とその解消の難しさにある。

しかし、だからといって大都市圏で空き家が「問題化」していない訳ではない。

東京都を例にしてみよう。総務省の住宅・土地統計調査によると、東京都の空き家率は1998年~2013年の15年間に渡り約11%と横ばいであり、これだけを見れば東京都の空き家増加には一定の歯止めがかかっているように感じられる。

だが、実際の空き家の「数」を見るとその印象がかなり変わる。

上記同調査によると、2013年の東京都の空き家は「81万7千戸」に上り、これは全国にある空き家数のおよそ10%を占める。さらにこの内訳と推移を見ると東京都の空き家問題の「特殊性」が浮かび上がる。

2008年の東京都の空き家数は75万戸であり、その内訳は長期不在等の空き家が18万9千戸、別荘等が1万7千戸、売却用が5万3千戸、賃貸用が49万1千6百戸である。

2013年になると、空き家数は先述したように81万7千戸まで増加し、その内訳は長期不在等の空き家が15万2千戸、別荘等が1万2千戸、売却用が5万4千戸、賃貸用が59万8千4百戸となっている。

つまり、東京都では5年間で長期不在等の空き家が「3万戸」以上減少し、賃貸用の空き家が「10万戸」以上も増加したのである。

ここから分かるのは東京都では、全国で深刻な社会問題となっている「長期不在等の空き家が減少」したことが空き家の率を低下させているにも関わらず、「賃貸用の空き家が増加」しているために東京都の空き家率が横ばいになってしまっているという事実だ。

この様に空き家の「内訳」が変わることは、東京都の空き家率が15年もの間約11%を維持し続けている意味そのものが変わることを示唆している。

東京都の世帯数は2010年の約639万世帯から2015年には約670万世帯まで増加しており、東京都にはこの様な他の道府県からの人口移動が今後も一定程度続くと予想されているので、新規の住宅需要が急激に落ち込むことは考えにくい。

しかし、その流入人口もいずれは減少し、東京都の人口は2025年をピークに減少に転じると予想されている。(※東京都政策局企画局の推計)

今年は総務省が5年毎に行う「住宅・土地統計調査」の実施年だ。調査結果の公表は来年だが、これによって東京都はもとより大都市圏の空き家の現状がより鮮明になるだろう。

もしかすると将来の空き家問題が深刻なのは賃貸用の空き家が多い大都市圏かもしれない。

賃貸用の住宅が長期に渡り空き家であることは、深刻な社会問題である「賃貸又は売却の予定がなく、別荘等でもない長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅」を新たに生むことになりかねないのである。