米長期金利上昇をきっかけにダウ平均が記録的な下げとなり、日経平均も急落

久保田 博幸

flickrより:編集部

2日の米10年債利回り(以下、米長期金利)は一時2.85%と2014年1月以来の水準に上昇した。このきっかけとなったのは2日に発表された1月の米雇用統計とされる。1月の米雇用統計で非農業雇用者数は20万人増と予想を上回ったことに加え、平均時給も前年比2.9%の上昇と高い伸びとなったことから、FRBの利上げペースの加速観測が強まった。このため米長期金利が上昇ピッチを早め、あっさりと2.8%台に乗せてきたのである。

米長期金利上昇の背景としては、雇用統計を受けたFRBの利上げの加速観測があったのかもしれないが、長期金利が上昇しやすい地合となっていたことも確かである。米長期金利はチャート上、2.6%台に大きな節目があり、ここを抜けると3%あたりまで節目らしい節目がない。このため、米長期金利が2.6%を大きく上回ったことにより、市場のマインドとしては金利の上昇の可能性を意識せざるを得なくなり、上昇ピッチが加速した。金利の抑制要因には鈍感となり、金利上昇要因に敏感となるという地合に変わってきていたのである。今回の雇用統計に敏感に反応したのもこれが要因とみられる。ただし、いまのところ米国の足元の物価は落ち着いている。

この米長期金利の上昇に敏感に反応したのが米国株式市場となる。米国の株式市場は調整らしい調整がなくじりじりと上昇し、主要3指数が高値を更新し続けるという状況が続いていた。しかし、1月29日にiPhoneXの減産が報じられたアップルや、キャタピラーなどが大きく下落したことをきっかけに、本格的な調整局面を迎えた。29日のダウ平均は177ドル安、30日は362ドル安となり、31日は72ドル高、1日は37ドル高と切り返すが戻りは鈍く、2日にあらためて665ドル安となった。きっかけは米長期金利の上昇といえるかもしれないが、今回の米株の上昇局面にあってやっと本格的な調整が入ったともいえる。

5日の米国株式市場ではさらに調整が進んだ。ダウ平均はストップロスなども巻き込み、一時1597ドル安と取引時間中としては過去最大の下げ幅となり、引け値も1175ドル安となって過去最大の下げ幅を記録した。ちなみに米長期金利は一時2.88%まで上昇したが、米株の急落でリスク回避の動きとなり、2.70%に低下していた。

2009年あたりを起点とし、2016年初当たりから上昇ピッチを加速させていたダウ平均であったが、ナスダックの7000ポイント台という節目を抜いてきたことなども意識されてか、利益確定売りなどに押されやすい局面に転じてきたと言える。米長期金利が上昇してきたといってもまだ3%にも達してはおらず、金利上昇が急速に景気を冷やすといったことも考えづらい。また、FRBが年3回としている利上げを4回とする可能性もないとはいえないが、パウエル議長となっても慎重姿勢に大きな変化はないと思われ、物価が予想外に上昇ピッチを早めない限り、利上げ加速はあくまで市場の思惑と見ざるを得ない。

このため、ここで米株の上昇が止まって、基調が反転するとの見方はいまのところそれほど多くはなく一時的な調整との見方が強い。しかし、チャート上からも今後の動きには注意も必要となる。そして、この米株の大きな調整によって東京株式市場も影響を受けている。そもそも日経平均がここまで上昇してきた背景としては国内景気の拡大傾向もあるが、米国株式市場の上昇を受けての面も大きかった。ちなみに日本の長期金利については、いまのところ日銀にコントロールされて上昇する気配はない。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年2月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。