今回の株安の要因ともなった米長期金利、悪い金利上昇が起きている可能性も

久保田 博幸

米上院の与野党指導部は7日、国防費などを積み増すため、2018会計年度(2017年10月~2018年9月)と2019会計年度の歳出上限を合計3千億ドル程度引き上げることで合意した。同案が議会で成立すれば、18年度の歳出上限は前年度比1割強も高まることになる(日経新聞電子版の記事より引用)。

これによって政府機関の閉鎖の懸念は後退するものの、あらためて大型減税と歳出増で政府債務がさらに膨らむことになり、米長期金利の上昇要因となりうる。

米長期金利は2013年末のFRBによるテーパリングの開始決定をきっかけに一時3%台に乗せてきたが、それ以降は3%以内での推移が続いていた。テーパリングは2014年10月に終了し、2015年12月にはFRBは利上げを開始し慎重に正常化を進めることになる。

2016年に入り、世界の金融市場は急速にリスク回避の動きを強め、外為市場では人民元とともに資源国を中心に新興国の通貨が下落、円高が進行し、株は下落し原油先物は30ドル割れとなった。これらを受けて1月に日銀はマイナス金利付き量的・質的緩和を決定し、3月にECBは包括的な金融緩和政策を決定した。また6月に英国がEU離脱を決定するなどしたことで、リスク回避により米国債は買い進まれ、10年債利回りは1.3%台まで低下して過去最低を更新した。8月にイングランド銀行が利下げや量的緩和を含む包括緩和を決定し、9月に日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定するものの、FRBの正常化路線に変更はなく2016年12月に2度目の利上げを決定している。

2016年11月にトランプ政権が誕生したが、一時下落していた米株はむしろ上昇ピッチを速めることになる。米国の雇用がタイト化し、景気の拡大傾向が明らかとなり、2017年には3月、6月、12月にFRBは追加利上げを決定している。しかし、それでも米長期金利の上昇は抑制されており、2.6%以内での動きとなっていた。

2018年1月19日に米長期金利は2.63%あたりにあった節目を抜けた。そこからはテクニカル的な動きも加わり、上昇ピッチを速め、2月5日には一時2.88%まで上昇した。今年も昨年と同様に年3回程度の利上げが予想されていることに加え、物価はFRBの目標には届いていないものの、景気拡大にともない物価上昇の可能性も意識されての米長期金利の上昇となったものとみられる。

ここまではいわゆる良い金利上昇といえるが、そこに政府債務増とそれによる国債発行増という需給要因と債務悪化という悪い金利上昇が加わりつつある。米長期金利は次の節目は3%ではあるが、果たしてそこで止まるかどうかはわからない。さらに悪い金利上昇となれば、これが株式市場などにとっても悪材料視される。このため、今後の動向には注意が必要となる。米国は軍事パレードなどやっている場合ではないとも思うのだが。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。