運営権収入で25億円!浜松市の下水道コンセッション方式

2018年02月09日 11:30

こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

本日(2月8日)はいま現在日本で唯一、下水道事業の一部を「コンセッション方式」で運営することが決まっている静岡県浜松市へと視察に伺いました。

東京都では都政改革の1つとして、下水道事業の一部で「コンセッション方式」の導入を検討することが決定され、次年度から議論が加速していくことが予想されています。

民間への下水道運営権売却、東京都が検討:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25108280W7A221C1L83000/

コンセッション方式とは、自治体が施設などの所有権は維持したまま、その運営権のみを民間事業者に売却して運営を任せる官民連携手法の1つです。


(以下、資料は「浜松市における下水道事業へのコンセッション方式導入について」より抜粋)

自治体は事業を直営するコストがなくなるのは勿論のこと、事業価値によっては多額の運営権対価(収入)を民間事業者から得ることもできます。

この手法は平成23年にPFI法が改正されたことで可能になり、国は公共事業における官民連携手法の積極的な活用を促しています。

しかしながら「民営化」に対する抵抗感はまだまだ根強く、下水道事業でコンセッション方式(運営権の売却)が行われるのは浜松市が全国初にして唯一となっています。

浜松市はいわば「コンセッション方式の先進自治体」なのです。

とはいえ、浜松市も実際にコンセッション方式による運営がスタートするのは今年の4月から。ここから様々な効果検証がスタートしていくことが見込まれています。

なぜコンセッション方式なのか

上下水道などのインフラ事業はこれから、非常に厳しい局面を迎えます。

人口減少社会に直面すると同時に、数十年前に新設された施設は更新時期を迎え、このままでいけばその負担は「使用料の増加」という形で利用者(都民・市民)にかかっていくことにならざるを得ません。

これは財政が豊かであると目されている、東京都でもまったく事情は同じです。

少しでも負担を軽減していくために市民生活に不可欠なインフラを、いかにして最低限のコストで運営するか。そこで有効な手立てが民間の力を活かしたコンセッション方式です。

もちろん自治体運営でもコストカットの努力は行えますが、事業が単年度会計であることや調達方法に制限がある(公共事業は原則入札)ことなどから、一定の限界があります。

浜松市の試算によると、コンセッション方式で運営権を20年間、まとめた期間で民間事業者に任せることで、期間や調達方法で裁量をもった選択が可能となり、7.6%のコストカットが見込まれました。

ところが、予想は良い方向に裏切られます。

プロポーザル方式で参加した事業者からは、浜松市の試算を大幅に上回る14.4%の事業費縮減が提示されます。これは20年間で約86億円にものぼる数値です。

さらなるプラスの誤算は、運営費売却の収入(運営費対価)です。

浜松市は当初、プロポーザル条件の運営費対価は「0円以上」と設定しており、運営費売却による利益は見込んでいませんでした。市が本来負担する運営費の削減さえできれば、まずは十分と考えていたわけですね。

しかしながらなんと、プロポーザル企業が提示してきた運営費対価は「25億円」。これは浜松市の売却益となります。

つまり実績のある民間事業者から見れば、これだけの金額を払っても十分に利益が出せる、工夫の余地が大きい「魅力的な事業」なのが、この下水道事業とも言えるわけですね。

企業に食い物にされて、市民負担が増える?

コンセッション方式に対する批判として多いものに、「民間事業者に経営を任せたら、使用料が上がるのでは?」「民間事業者に旨味があるだけではないのか!」というものがあります。

確かにコンセッション方式は運営権≒経営権を民間事業者に譲渡するので、価格設定を自由に決められてしまうイメージがあります。

しかしながら浜松市では、ここにきちんと制限を設けています。

コンセッション方式で運営する下水道事業はあくまで市全体の一部(11ある処理区のうちの1つ)であり、下水道使用料は条例によって統一価格で定められることから、民間事業者側はこれを決定できないことになっています(協議を申し入れることはできる)。

裁量によって経営を任されているといっても、あくまで運営・支出面の工夫によって事業者側は利益を向上させることを目指すわけですね。

それでも、十分に採算が取れると見込んでいる企業が手を挙げていることは、前述の通りです。

コンセッション方式はリスクが高い?

「民間事業者は危ない」「突然撤退されたらどうするんだ!」という指摘もあります。確かに、リスクがゼロとは言えません(自治体がやっていてもリスクはありますが)。

このように20年という長期契約でなされるインフラ事業では、事業者の継続性が何よりも重要になります。

浜松市では事業者が途中撤退しないための対策として、

運営費対価の前払い(本来20年かけて払う金額の一部を前受けし、契約の履行を促す)
利用者≒市民から集めた使用料を時間差で支払う(一定期間、事業者に支払う前に市がキープする期間を設けることで、万が一事業者が突如撤退した不足の事態に使用できる資金としておく)
事業者の経営計画への参画(経営状態をチェックし、必要に応じて指摘を行う)

などの施策を講じるようです。

また、あくまでコンセッション方式で委託するのは事業の一部(11処理区のうちの1区画)なので、浜松市下水道事業の技術や運営ノウハウがすべて失われるわけではありません。

民営化に対する漠然とした不安は根強いものがありますが、高速道路のサービスエリアなどは、民営化することによって比較にならないほどのコスト削減・サービス向上に成功しました。

「福祉やインフラに関わる分野を民営化することは絶対ダメ!」

という心理も理解はできるものの、イメージが先行している感も否めません。

東京都でもコンセッション方式の導入は可能か?

まだまだ書きたいこと・学んだことは沢山あるのですが、長くなってきたので一旦まとめます。

こうした浜松市における導入への経緯・メリットデメリットの検証結果を聞いて、課題はあるものの東京都でも十分に導入できる可能性があると感じました。

たしかに東京都と浜松市では大きさも人口も異なりますし、地域によっては公設公営が馴染むエリアもあるでしょう。

あくまでコンセッション方式を採用するのは「下水道事業の一部」として、民間で採算が取りやすいエリアは民間に任せる、そうでないエリアは東京都が引き続き運営することでリスクを分散し、東京都としても運営ノウハウを保っていくことができます。

こうした視点から引き続き調査・研究を続け、さっそく第一定例会でも公営企業委員会で積極的に議論の俎上にあげていきたいと考えています。

なお、本日の視察は大学の後輩にあたる山本りょうたろう浜松市議にアレンジしていただきました。感謝!

最近サボっていたブログを再開するとのことなので、有権者の皆さまは厳しい目でチェックしてあげてくださいませ。

そして対応してくださった浜松市役所の皆さま、誠にありがとうございました。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は東京都議会議員、おときた駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年2月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。

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音喜多 駿
東京都議会議員(北区選出)

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