駒崎さんの「戦果」に見る学校経営の絶望的な危うさ

2018年02月10日 11:30

駒崎弘樹さんの氷点下で半袖半ズボン強制の小学校ルールを変えてもらった話を拝読しました。たしかに120%おっしゃる通りなのですが、ここには学校の抱える構造的な問題があります。(ただし、今どき半袖半ズボンを絶対強要している学校は少ないと思います)

ようするに、学校にかかわる人たちは、駒崎さんのように合理的に考える人ばかりではないということです。

前近代的と言ってしまえばそれまでですが・・・

教壇に立つと、児童生徒(場合によっては保護者)との主導権の争いです。座ってくれていればいいのですが、そういう児童生徒だけとはかぎりません。ここで、教師は一線を引きます。それが冬でも半ズボンだったり、給食は残すなだったり、シャープペンシルは使うなだったりします。ひとつひとつはほんとうにバカバカしい「規則」です。

けれども、教師にとっては、この「規則」が生命線だったりします。勉強よりはるかに重要です。なぜかというと、ここを譲り始めると学級は一気に崩壊する可能性を多分にはらんでいるからなのです。この恐怖感は、教壇に立って40人の子どもを前に、数か月ともに過ごしてみないとわからないかもしれません。もちろん、学級が崩壊するとだれが一番の被害をこうむるかというと、まじめで素直な子どもたちです。深刻さによってはトラウマになるでしょう。

それなりに理由のある不合理、それほどの教師は追いこまれている

もちろん、どんなたいへんなクラスでもまとめてしまう「すごい先生」もいます。それは「カリスマ性」だったり「強面」だったり「兄貴肌・姉御肌」だったりと、天性の「才能」をもった一部の教師です。

そうでない「ふつう」の先生は、「冬の体育でも半袖半ズボン強制」のようなはたから見ると些末なことを守らせることによって、子どもとの微妙な駆け引きに打ち勝ち、「この先生の言うことは聞かなくては」という雰囲気をなんとなく学級に作り、一年間をなんとなく平穏にやり過ごします。

全員を不幸にする学級崩壊のおそろしさ

学級崩壊したときに、校長や教育委員会は守ってくれません。保護者からクレームがきすぎて保護者会を開くとか、精神的にまいって担任が交代というときまで、まず校長は出てきません。校長本人の主観では「最後の砦」なので簡単に出て行ってはいけないと思っているようですが、客観的に見たら「ただの中間管理職」なんだからもっとフットワークよく動けよと思うのですが。

とうぜん教師の足元を見る子どもたち

このように「保護者からのクレーム(駒崎さんはクレームとは言っていませんが)」にはひじょうに弱い学校ですが、それを子どもたちに見透かされると学級の秩序は維持できなくなります。たとえば、体育の時、他のクラスには体操着を忘れたら参加させないというルールがあり、自分のクラスだけ忘れても参加してよしとしましょう。子どもたちは、「合理的だ、優しい先生だ、ありがとう」とは十中八九思いません。「この先生はなめていいんだ」というメッセージを送ることになってしまいます。しかも強烈に。

つまり、かなりあやういバランスの上に成り立っている学級経営・学校経営をそろそろ見直した方がいいのではないかと申し上げているのですが、文科省や教育委員会の事務方の方は教壇に立ったことがなく、「ほんとうの教育問題」がどこになるのかわかっていないようです。だから「ゆとり」とか「詰め込み」とか、上澄みの部分の議論に始終しているのでしょう。きっとそんな「未来志向」な議論の方が楽しいだろうし。

学校制度は実は脆弱すぎる

家庭のように外から見ると、学校組織とは巨大に見えますが、管理職以上と、教室をつかさどる教師とは関係が切れてしまっているのです。(その顕著な最近の例が、公立小学校なのに制服をアルマーニにしてしまった件ではないでしょうか。校長の独断だったそうです。担任たちが知っていたら、間違いなく止めていたでしょう。もしかしたら、この方は教師経験のない、教委からおりてきていずれ教育長になる「お公家様」タイプの校長かもしれません)担任は孤独な個人事業主のようなものです。(ほんとうの個人事業主の方のたいへんさにくらべれば、比べるべくもありませんが・・・)

先日、給食を無理やり食べさせて吐かせたという事件がありました。この短い記事の内容だけでは何とも言えず、ここからはまったくの憶測と偏見ですが、「給食、苦手なものはどんどん残していいよ!好き嫌いは誰でもあるものね!」と笑顔で言っていた私のような軟弱教師では学級崩壊をしていたのではないかと思ってしまいます。

教師たちがこのような無理な行動に出ずとも、安定した学級経営ができるような制度になることを、OBとして心から祈っております。

中沢 良平(元小学校教諭)

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