バロンズ:米株急落、最悪期は脱したのか

2018年02月11日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは市場急変を掲げる。2016年の米大統領選から最近までの15ヵ月間、米株市場は一本調子で上昇し続け、36%高を遂げてきた。しかし、ニューヨーク州にあるコニーアイランドのジェットコースター、サイクロンのように目まぐるしく変動するなか、S&P500は200日移動平均線を割り込んだ後に切り返しを遂げている。少なくとも株価収益率(PER)はかつての19倍近くから17倍割れまで下がり、割安感が出てきている。2016年2月に米株相場が急落した当時は15%安で跳ね返ってきたが、新たにパウエル米連邦公開市場委員会(FRB)議長を迎え、今後どこへ向かうのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが注目するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートも、もちろん市場の急変を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

米株が急落した本当の理由:The Real Cause of Stocks’ Big Stumble.

今、我々は過激な金融絵施策の終焉の始まりを目撃しつつある。その過程で、米株市場は急落、低いボラティリティを見込んだ”ショート・ボラティリティ”取引を提供するVIX指数連動証券が取引停止に見舞われ、米株相場下落の傷口を広げた。2月5日週の米株相場の下げ幅は、原油安の打撃を受けた2016年1月以来で最大となる。今回の急落劇の引き金は、それほど問題ではない。力強い労働市場での賃金上昇だからだ。

米1月雇用統計では平均時給が前年比は3%近く上昇しグッドニュースを届けたが、途端にバッドニュースへ変貌を遂げてしまった。トランプ大統領は同日に「良いニュースが伝わったにも関わらず、米株が下落している。経済について大いに良いニュースが伝わってるにも関わらず、大きな間違いだ」とツイートしたものだ。

しかし、好調な経済こそ問題なのである。完全雇用に到達した経済は今年6月に9年目を迎え、金利は未だ世界恐慌時代並みの低水準にある。同時に、財政政策は景気後退期にふさわしいほど超緩和的で、成長加速期の政策ではない。後者でいうなら、ブッシュ政権(子)時代のチェイニー副大統領が「赤字は問題ではない」との言葉を彷彿とさせる。税制改革法案の成立で、財政赤字は向こう10年間で1.5兆ドル拡大する見通しで、9日に成立した予算案では3,000億ドルの赤字を増大させる。非政府・営利団体の”責任ある連邦予算委員会(CRFB)の試算では、向こう10年間で連邦債務は4兆ドル拡大し、2027年までに連邦債務はGDP比で105%に到達するという。

連邦債務、CRFBはGDP比では最悪で111%とも試算。CBOは97.5%を予想。

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(作成:My Big Apple NY)

完全雇用の状態であれば、消費者が将来の増税に備え貯蓄を増やせばよい。一方で最悪の事態は、ケインズのモデルが示すように、貿易赤字の拡大、ドル安、そしてインフレ加速だ。既に米債市場は双子の赤字をにらみ反応しているようで、前週の米10年債と米30年債の入札は共に不振に終わった。そもそも、足元の米株急変の問題点は、投資家がリスク資産である米株市場から資金流出させるタイミングで、米債が買われていない事実である。

この間、ジェローム・パウエル氏がFRB議長に就任し、その日の2月5日にはダウが1,000ドル以上も急落、史上最大の下げ幅を演じた。グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ主席エコノミストいわく、パウエル氏はイエレン前FRB議長のクローンではない。指名公聴会でパウエル氏が量的緩和と超低金利政策を好ましく捉えていない態度を示し、金利正常化を粛々と行う姿勢を表明していたためだ。

ローゼンバーグ氏によれば、金利正常化とはFF金利誘導目標を2.75%へ引き上げることを意味し、中央値は現状の1.25〜2.5%の2倍に相当する。つまり米株が歓迎できない年2〜3回以上の利上げを意味し、流動性吸収が力強いファンダメンタルズを打ち消した1987年、1994年、1998年、2007年当時のような米株急落をもたらしかねない。

市場は、パウエルFRB議長によるはったりを求めているようだ。米株は1月26日つけた最高値から急落し、ウィルシャー・アソシエイツによれば2.9兆ドルもの時価総額が吹き飛んだ。FF金利先物市場は今年3回の利上げ確率を巻き戻し、3月20〜21開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げの確率を87%見込みつつ、次回の利上げは9月25〜26日開催のFOMCまで織り込んでいない12月18〜19日開催のFOMCでの利上げ確率は、50%以下だ。

どんな理由があろうが、S&P500は9日の午後に人間とコンピューターが注目する200日移動平均線を割り込んだ後で下げ止まった。他にも理由が考えられ、JPモルガンのニコラオフ・パニフィルゾグロウ氏によれば、商品投資顧問(CTA)とリスク・パリティ投資のファンドで既に大規模な清算が行われ、ここから先のポジション巻き戻しは限定的となりそうだ。

米株急落の最悪期は終わったのだろうか?恐らく、短期的には収束したのだろう。株式の投資信託は前週、300億ドルの資金流出を記録し、小規模なファンドは償還したに違いない。ただ、上場投資信託(ETF)でいうなら、VIX指数のショートに連動するETNが閉鎖された陰で、別の商品に資金が流入中だといい、底打ちというのは投資家が存在する限り確認しづらいものだ。

前週の米株急落を受け、大したことはないと発言したのはNY連銀のダドリー総裁だ。では、2016年1月以来の急落を演じた米株を経て、どれだけの投資家が打撃を被ったのだろうか。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、米国の世帯の上位10%のみが米株に直接影響するエクスポージャーを抱えており、米株相場の84%を占めるという。

ゴールドマン・サックスは富裕層と金融市場に深い関連があるといい、2017年の米株上昇こそ、経済拡大の重要な役割を担ったという。GSのエコノミスト、ダーン・ストルイベン氏いわく「米株高はGDPを0.6%ポイント押し上げ、成長1%増のうち3分の2が金融市場環境によってもたらされた(ここでいう金融市場環境とは米株高だけを意味せず、低金利、信用リスクプレミアムの縮小、軟調なドルなどを指す)」。金融環境が成長押し上げに大いに貢献した結果、2017年に2.6%増を遂げたというわけだ。

ただし、ストルイベン氏は米株高の経済押し上げ効果は2018年10〜12月に0.3%ポイントへ伸びを縮小させるという。この試算はあくまで米株高が徐々に弱まるケースに当てはまり、直近の米株急落のような途方もない不確実性が浮上すれば、話は変わる。米株が20%以上も暴落する弱気相場に突入すれば、経済押し下げ効果は0.5%に達してしまう。逆に米株が四半期ごとに10%も上昇するような勢いを維持した場合、押し上げ効果は1%に達し、2018年の成長率は3%超えも夢ではなくなる。ウォール・ストリートの暗雲が垂れ込めば、メインストリートに雨が降るということだ。GSが指摘するように、ウォール・ストリートとメイン・ストリートはつながっているのだろう。


さて、筆者はカオスと化したウォール・ストリートを拝みにニューヨークヘ行って参ります。ワシントンD.C.にも足を伸ばすので、11日週からの1週間は投稿が途切れがちになってしまいますが、現地のネタをたくさん仕込んで参りますので、暫くお待ち下さいね。

(カバー写真:joel/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年2月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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