蟻塚でもがく日本

2018年02月12日 10:00

今、シカゴオヘア空港にいる。まだ、体調は完全には回復していないが、あと1時間ほどで飛行機に乗る。今回は、2泊でシカゴに戻る予定だったが、他の重要案件の予定が入り、5泊することになってしまった。ようやく、時差ボケも取れ、体調も戻りつつある中での、東京行きは正直かなり気が重い。

しかし、7月以降の活動に決定的な影響のある会議が続くので、気は抜けない。私の考える「がんプレシジョン医療」は「がんの診断」「治療薬選択」「新規の免疫療法開発」とがんの医療体系を改革することを目指している。ゲノムと人工知能が共通のキーワードなので、大きな視点でとらえた方が、より効率的に新しい医療の構築につなげられる。

繰り返しになるが、日本では数百遺伝子を調べる遺伝子パネル検査がようやく動き出した。それに、50万―80万円の検査費用が設定されようとしている。これだけの費用をかければ、今の技術と価格では、正常とがん組織のエキソーム解析とトランスクリプトーム解析は十二分に可能だ。そして、遺伝子パネルでは得られないネオアンチゲン情報も得ることができる。これを考えれば、5年後を見据えて、全エキソン解析に舵を切るべきだが、そうはならない。5年前に考えたことを、今になって実現化するといったスピード感の無さが、日本のガラパゴス化につながっているのだ。

悲しい話だが、日本から入ってくる話は、5年以上も前に米国でされていた議論と同じで、黴臭くなった話だ。ゴルフで、10年くらい前の古いクラブと古いボールを使えば、ほぼ勝ち目はない。最先端の技術と情報を速やかに医療現場に取り入れていく発想が必要だが、常に5-10年前の米国の情報をもとに、議論されているように思えてならない。

最先端のポジションで、最先端の取り組みをしてこそ、最先端のイノベーティブな発見が生まれる。それを医薬品開発や診断法開発につなげてこそ、日本は医療の先端国でありうる。この20年間以上、この当然のことができないままに、日本は蟻塚の中でもがき、脱出できないでいる。オリンピックではないが、がんばれ、日本だ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2018年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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