専門用語やカタカナ英語は知っていても損は無いはずだ!

写真は書籍紹介用画像


専門用語やカタカナ英語の多様は好ましくないとする意見は多い。しかし、コミュニケーションの理解不足は、突き詰めていくと、連絡が不十分だったとか、話がうまく伝わっていなかったとか、勘違いだったとか、人に起因することがほとんどである。専門用語やカタカナ英語は、誤解を招く元だが、考え方次第ではないだろうか。

今回は、『ミス・ロスが激減する!話し方・聞き方・伝え方』(明日香出版社)を紹介したい。著者は、会社員でありながら、ベストセラー作家でもある中尾ゆうすけさん。イラストレーターとしての腕もなかなかのようで、本記事の画像をご覧いただきたい。これは、書籍の紹介用画像になるが中尾さんの作品になる。

社内でよくあるこんな会話

--ここから--

Aリーダー
「前回に引き続き働き方改革についてブルーフィングをしたい。本日のアジェンダはレジュメBを見てほしい。メディアでもトピックとして扱われる長時間労働のリスクは、当社でもプライオリティの高いタスクの一つになる。当初はタイトなスケジュールだったことからリスケになりペンディングの状態だった。早く確立させたい。」

B社員
「レジュメもスケジュールもビジーでした(笑)。今月中に関係者のアグリーをとりつけましょう。早急にプランを考えてコストについてボードメンバーのコンセンサスをとる必要がありますね。レイヤー毎に認識はどうですか?」

C社員
「マネジャークラスに意識のギャップが見られます。残業時間に対するKPIの設定をし、オーソライズしたうえで、ラインマネージャーからエスカレーションしてもらうスキームを確立します。確実にエビデンスを残すことがリスクとガバナンスの観点でも重要です。また、今回はパートナーとしてMMコンサルティングにはいってもらう予定です」

Aリーダー
「あとで、クルデンシャルについて報告してもらいたい。パートナーとしてアサインするのであればインプリまでお願いしたい。プライオリティについてはどう考えている?」

B社員
「まずは労働時間を確実にマネジメントすることと、制度をプランニングすることで会社と社員がウィンウィンになることが必要です。問題をキャッチアップするプロセスも必要になります。おぃ!D社員(新入社員)なにをコソコソしているんだ?」

D社員(新入社員)
「すみません。皆さんの会話についていけなくて、スマホで調べてました」

--ここまで--

「ドラッカーはコミュニケーションの4原則の一つとして『コミュニケーションは知覚である』と言っています。これはつまり、相手が理解してこそコミュニケーションであるということです。極端な例で言えば、相手が日本語の通じない外国人に対し、日本語で説明してもまったく理解されないということです。」(中尾さん)

「今回のケースは極端ですが、よく耳にはするものの、なんだかよくわからないカタカタや専門用語が立て続けに出てくると、理解不能な会話になってしまことがよくあります。『コミュニケーションは知覚である』という観点で言えば、ポイントはお互いが配慮する必要があるということになります。」(同)

常に学ぶ姿勢が大切

筆者はコンサルティング会社出身だが、社内では一般的には理解できない、専門用語やカタカナ英語が飛び交っていた。このような場合、相手をコントロールできない以上、情報レベルは相手に合わせなければ伝わらない。

「そもそも自分自身もよくわかっていないような言葉は避けるべきです。また、よく耳にする言葉や業界の専門用語などは、常に情報収集して理解しておきましょう。わからなくてもわかったフリをして話を進めると、あとになって『この間、了解したはずだよね!』などと言われてトラブルの種になってしまいます。」(中尾さん)

「専門用語やカタカナ英語は避けたほうが無難ですが、新しいことを学ぶ姿勢も大切です。2017年の流行語の一つに『忖度』という言葉がありました。ビジネスの場でも急速に使われはじめ、『よく聞くようになったけれど、なんだかわからないし、いまさら聞きにくい』。そのような姿勢で学びはありません。」(同)

筆者が永田町に出入りしている頃、次のようなことがあった。電話口では「政策(せいさく)」と聞こえる。「施策(せさく)」とも聞こえる。「明日は禁足(禁則?)」「その件は知悉(地質?)」「いわんや(言わんや?)」。数え切れない失敗をして、ようやく言葉を理解していった。「忖度」はそんな言葉の一つだった。

専門用語やカタカナ英語に嫌悪感を抱く人は多い。しかし業界には業界なりの慣習があるのだから知っていて損は無い。さて、筆者も1月に新しい本を上梓したので、関心のある方は手にとっていただきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト