「不動産テック」は不動産取引の何を変えるのか

2018年02月14日 06:00

いま、不動産業界は「ガラパゴス状態」らしい。

確かに不動産業界では未だにFAXが大活躍しているし、いざ取引となれば売主買主が署名し印鑑を捺す「紙」の量は膨大だ。

また、不動産売買における「決済」はさらにアナログに見えるかも知れない。

一般的に不動産の代金を支払う「決済」は銀行で行われる場合が多い。

これは、買主が不動産代金の一部或いは全部を銀行から借り入れして支払う場合が多いのと同時に、その取引額が高額であるため代金が現金だけではなく振込や自己宛小切手で支払われるためだ。

その決済の場には売主、買主、登記を委任する司法書士、介在する不動産業者等が一堂に会し、様々な書類を持ち寄り、さらにここでの各書類への署名捺印をもって初めて不動産代金の支払いがなされる。

フィンテックが目まぐるしく進化を遂げるなか、この決済方法はまさしく「アナログ」である。

既述した決済方法のみならず、これまで不動産取引において問題だとされてきたのは売物件や取引事例等の情報が「不透明」である点だ。

いま注目されている不動産テックのひとつとして、販売物件の価格や成約価格(取引された価格)をオープンデータ化しようとする動きがある。いわゆる「価格の可視化」だ。これが実際の取引や査定時の指針に役立つことは分かるが、民間企業がこれを行う場合、その信頼性を高めるための方法論や、どこまで個人のプライバシーに踏み込めるかが課題になるだろう。

また、先に触れた不動産売買代金の「決済」だが、これを不動産テックにより効率化する場合にも様々な課題がある。

まず、不動産売買は「売主の所有権移転義務、引渡し義務」と「買主の代金支払い義務」が同時履行されることが原則だ。

買主が所有権移転登記をすること自体は義務ではないが、登記を備えなければその不動産の所有権を第三者に対抗することができないし、そもそも銀行から融資を受けてそれを不動産の代金に充てる場合はその不動産に銀行の抵当権が設定されるので所有権移転登記は必須となる。

不動産売買にこの「所有権移転登記手続き」が伴う以上、登記制度が根本から変わらない限り不動産売買代金の決済は「アナログ」のままであるしかないのだ。

例を挙げよう。仮に将来、仮想通貨が不動産売買決済に使われることが一般的になったとする。代金の支払い自体はネットで短時間に、安全に、安価な手数料で行えたとしても、所有権移転手続きの為の書類の準備、各書類への署名や捺印は必要であり、この書類等の準備が確認できていなければ所有権移転登記の確実性が担保されない。

また、その書類等が事前に確認できていたとしても、買主は代金支払いと同時にこの書類を受け取らなければならない為、結局は売主買主本人同士、若しくはその代理人が決済時点で「同席」しなければ取引の安全は確保できないのだ。(※エスクローという方法があるが日本の不動産取引では一般的ではない為ここでは触れない)

一方で不動産テックには実際の不動産取引において即効的に親和性が高そうなものも多い。

例えば、住宅ローンなどの審査や手続きがスマートフォンで出来るようになればローン利用者の負担(金融機関の営業時間内に窓口を訪れる等)が軽くなると同時に、金融機関側のコストも大幅に削減できる。

また、スマートフォンなどの電子機器を通じて開錠や施錠を行う「スマートロック」にも様々な応用が期待されている。

実は先述した「価格の可視化」と「所有権移転登記」も、将来は進化・発展していく可能性を秘めている。(※あくまで将来の可能性である)

ご存じの方もいると思うが、国土交通省では「実際に行われた不動産取引の価格」を当事者にアンケートで調査し、そこで得られた回答を「物件が容易に特定できないように加工」して公表している。(※国土交通省HP

この調査は所有権移転登記情報を基に実施されておりその信頼性も高いと言えるだろう。「官民」の協力があれば、「信頼性の高い」価格の可視化は一気に現実味を帯びるのだ。

さらには将来、「官民」協力のもと不動産登記にブロックチェーンが応用されれば、所有権移転手続きに「紙」も「印鑑」も必要なくなるかもしれない。実際にブロックチェーンの不動産登記への活用については2017年4月、内閣府の「規制改革推進会議」のワーキンググループで議論されている。

不動産テックが持つ可能性は小さくないが、現段階では大きな変化も生んでいるとは言えない。しかし、官民が一体になり不動産テックの推進に取り組むことこそ、不動産取引の環境が「ガラパゴス状態」から抜け出す一歩になるかもしれない。

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