マドリード、職を求めて履歴書を提出する長蛇の列

El Confidencialより引用

マドリードのドン・キホーテとサンチョ・パンサの銅像のあるスペイン広場の前に先月長蛇の列が出来た。理由は、スペイン広場の前に高級デラックスホテル「Hotel VP Plaza España Design」の開設が近く予定され、100名を採用する募集があったからだ。この長蛇の列は、その為の履歴書の提出するのに集まった人たちであった。提出された履歴書の数は7000枚になったという。

スペインの昨年11月時点での失業率は16.7%、25歳未満の失業率は37.9%であった。2015年の失業率20.8%、25歳未満45.9%に比べると、雇用は僅かに回復している。しかし、今も多くの人が職を見つけることが出来ない状態が続いている。

働きたくても職場が見つからないという厳しい現状を具体的に見せるかのような現象が今回の長蛇の列であった。

このホテルの雇用を担当している責任者によると、応募者の唯一の必須条件は「働く意欲があること」と「英語ができること」の二つだという。

その一方で、今回の募集の仕方に批判が出ている。単に履歴書を提出するだけの目的で応募者が列に並ばねばならないということへの批判であった。履歴書はインターネットで十分に送ることが出来るからである。しかし、ホテル側から見れば、この長蛇の列を作らせることによって、ホテルの無料の宣伝になるというのであろう。この珍事に、テレビやラジオの取材班が駆けつけて報道した程であった。しかし、ホテルの雇用責任者の回答は、世間で注目を集める為にこのような募集形式を取ったのではないと否定しているという。

履歴書を提出するだけの為に自動車の排気ガスを吸わねばならないことに不満を言う者もいたそうだ。何しろ、履歴書を提出する順番が来るまで4時間待ち。トレドから娘の為に列に並んだ父親もいたという。娘が午前中の授業に欠席しないためだという。午後に娘が来てバトンタッチするそうだ。列をつくっているひとの大半は20代から40代だったそうだ。

正に、スペインで若者が職場を見つけることが如何に難しいかということを証明する出来事であった。一方の若者も就職することに一生懸命になっているということを如実に示す一面であった。

一方のマドリードのライバルで、独立問題に沸いているカタルーニャの首府バルセロナでは2015年半ばから今も市内でホテルの建設が禁止されている。ポピュリズム政党Catalunya en Comúが政権に就いてそのような政策を実行しているのだ。彼らは、これまで無秩序に発展した観光都市を批判し、新しい観光都市計画が出来上がるまでバルセロナで新しくホテルを建設することを禁止した。ホテル建設の為の認可を出さないということなのである。

しかし、問題はこの計画の具体化が現在も出来ておらず、ホテル建設は現在も出来ない状態が続いているのだ。2015年5月に政権に就いてから2017年まで2年半もバルセロナで新規のホテルが建設出来ないというのは深刻な問題になっている。

この影響で、スペインで訪問客の訪問が一番多いバルセロナの経済的後退は必至である。民意を常に尊重するとしたポピュリズム政党が逆に市民の新たな経済発展と雇用の機会を潰しているのである。

HyattやFour Seasonsなど高級デラックスホテルはバルセロナへの進出を中止した。働きたい市民の雇用の機会を喪失させているのである。4000人の雇用創出の機会を失ったことになるとしている。

高級デラックスホテルの進出の中止はバルセロナのGDPにおいて年間で1億ユーロ(135億円)に近い損失になるとされている。世界的に著名な高級ホテルがバルセロナに進出する機会をポピュリズム政党の政権は喪失させてしまったのである。

バルセロナのホテル業界から数百社集まってホテルが建設出来ない規定は違法だとして市役所を相手どって訴訟を起こしている。

昨年、外国からの観光客が8200万人となり、観光立国として世界2位に躍進したスペインは世界の高級デラックスホテル業界にとって無視できなくなっている。2大都市マドリードとバルセロナには高級デラックスホテルが不足していると言われている。しかし、期待されていたバルセロナが独立問題を抱え、しかも市役所はホテルの建設を禁止している。このような状態から世界の高級デラックスホテル業界はマドリードへの進出に集中するという事態になったのである。

Four Seasons、Starwood、RIU、Hyatt、Marriott、KKH、VP Plazaなどの高級デラックスホテルが今年から来年にかけてマドリードで営業を開始する予定になっている。MeliáグループはGran Meliá Palacio Duqueが高級ホテルとして180部屋でもってつい最近オープニングしている。冒頭にて触れた高級ホテルは17階建てのVP Plazaで214部屋を用意することになっている。これらのホテルの進出によって、マドリードでは新たに4413部屋が用意されることになるという。