参議院の合区解消のための改正なら、選挙制度の改革を

憲法改正の4項目の内の1本の柱となる参議院選挙の合区解消のための憲法改正案の条文化作業が自民党で了承された、と報道されていたが、反対論が噴出しなかった、という程度のことであって、報道されているような内容のままで与党の協議が整うことはないだろうと思っている。

選挙制度を如何に設計するか、ということは国、地方を問わず政治の根幹に関わる問題であり、憲法の改正を議論する以上は選挙制度の在り方自体も俎上に乗せたくなる気持ちは分かるが、だからと言ってこの段階で中途半端に結論を出していいような問題ではないだろうと思っている。

自分たちの選挙基盤は何としても護り抜きたいと思っておられる既得権層に属しておられる方々は、最高裁からあれこれ干渉されないで済むように、今の内に憲法の規定を変えて現行選挙制度の改変を阻止したいところだろうが、多分大方の国民の共感は得られないだろうと思っている。

自民党の中での議論の中身が漏れ伝わってきているが、どうも憲法の改正まで必要とするような大きな問題ではないな、というのが私の感想である。

選挙制度をあれこれいじりたい、という気持ちはそれなりに分かるが、今直ちに結論を出さなければならない、という類の問題ではなさそうだ。

一応の議論はするが、結局は店晒しに終わりそうである。

自民党の中では異論はあまり出なかった、ということだが、異論がないからと言ってそれでいい、ということにはならない。報道されている案は、公明党や野党が反対すれば、あっという間に潰れてしまう程度の案だろう。

まあ、憲法改正問題に火を点けるための、軽いジャブみたいなものか。

選挙制度の改革は、一旦議論を始めれば、関係者の利害が錯綜してあっという間に難しくなる。
現職の国会議員だけで議論をすれば、結局は現状維持派、いわゆる守旧派の人たちが勝ってしまうような話になってしまう。

自民党が了承したという改正案には、まだ魂が入っていない。

憲法改正よりは、まずは選挙制度改革基本法のような、選挙制度改革の理念を定める法律の策定を急いだ方がいいのではなかろうか。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年2月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。