自民党が参院選までに被選挙権も20歳に引き下げる!

高橋 亮平

被選挙権年齢引き下げのポイントは導入時期。2019年参院選か統一地方選か

自民党内で18日、国政・地方選挙に立候補できる被選挙権年齢を一律「20歳以上」に引き下げる案が浮上したとして、翌19日に時事通信が伝えYahoo!ニュースでもヘッドラインニュースとなりました。

選挙に立候補する被選挙権年齢は公選法で、参院議員と都道府県知事は「30歳以上」、衆院議員や市区町村長、地方議会議員は「25歳以上」、と規定されていますが、若者の政治離れを食い止めると同時に、党勢を拡大する狙いからだ。2019年夏の参院選での導入を視野に、党・政治制度改革実行本部(塩崎恭久本部長)で議論を進め、今国会への公職選挙法改正案提出を目指すとの報道でした。

ただ、2017年8月の時点で、私、高橋亮平は、『【自民党が進める若者参画】秋には「18歳成人」、2019年までに被選挙権年齢も引き下げ』とのコラムを書いていました。

2017年6月の自民党本部で開かれた自民党選挙制度調査会に招かれこの調査会で高橋亮平が被選挙権年齢引き下げの必要性などについて講演する機会をいただいたのですが、この際に既にこの自民党選挙制度調査会では2019年の統一地方選挙までの施行と目標を定め、法改正の準備を進め始めていたからです。

その意味では、改めて自民党内でのこの方針が順調に進んでいるという事であり、特に新たに何かが起こったということではないのではないかと思います。

一方で今回の報道ではポイントとなる事も何点かあります。

1つは、これまで自民党での被選挙権年齢引き下げについては選挙制度調査会(逢沢一郎会長)のところで検討されていたが、今回の報道は政治制度改革実行本部(塩崎恭久本部長)になっている事、もう1つは、半年前の時点では2019年4月の統一地方選挙での被選挙権年齢引き下げという事だった時期が、2019年7月の参議院選挙からの導入と報道されている事です。

被選挙権年齢の引き下げの効果という意味では、国政選挙以上に地方選挙の方がその効果は大きいと考えています。

その点ではたった3ヶ月ではありますが、4月の統一地方選挙に間に合わせる事ができるかは非常に重要な要素になって来ると言えます。

被選挙権年齢引き下げの論点については、以下のコラムに2017年6月に自民党選挙制度調査会で講演した際に使った資料も添付していますので、合わせてご覧いただければと思います。

16歳高校生が州知事選に立候補し全米で話題に、日本も2019年までに被選挙権年齢が引き下げられる

なぜこの時期の被選挙権年齢引き下げなのか

国民からすれば、そうは言ってもまたもや「急展開での被選挙権年齢引き下げ」との印象を持っている人も多いかもしれません。

こうした多くの皆さんに対して「なぜこの時期の被選挙権年齢引き下げなのか」についても紹介しておきたいと思います。

2015年6月に公職選挙法が改正され、2016年7月の「18歳選挙権」による初めての参議院選挙が行われた事は、多くの皆さんもご存知かと思います。

そもそもこの「18歳選挙権」実現のきっかけになったのが、2007年に成立した憲法改正のための手続きを定めたいわゆる「国民投票法」がありました。

この国民投票法の附則に「選挙権年齢引き下げ」の法制上の措置を取る事が記されていたからです。

国民投票法には、さらに同時に「成人年齢の引き下げ」についても明記されており、これが宿題として残されていました。

図表: 選挙権年齢引き下げと成人年齢引き下げに関係する法文上の記載

出典: 高橋亮平作成

この宿題である成人年齢引き下げが、先延ばしになっていましたがいよいよ今国会に提出されるという事が一つの要因としてあります。

もう一つが、18歳選挙権が導入された事でより注目された若者の政治参加ですが、同時に若者の政治離れや低投票率が大きな課題となった事、さらには地方自治体議会においてはもはやなり手不足となる自治体が出てきているという要因もありました。

こうした中で、政治的なテーマとして上昇してきたのが、この被選挙権年齢引き下げでもあります。

こうした中で、この被選挙権年齢引き下げも含め、選挙権・成人年齢などがどう議論されてどうなってきたのかを年齢と関係法令の関連から分かりやすく図でも示しておきたいと思います。

 

図表: 成人・選挙権・被選挙権等年齢の推移と関係法令との関係

出典: 高橋亮平作成

2016年参院選の際には与野党各党が選挙公約に「被選挙権年齢引き下げ」

図表: 主要政党の被選挙権年齢引き下げ公約及び法案提出状況

出典: 高橋亮平作成

被選挙権年齢引き下げについては、これまでも『若者が与党を動かした!~自民党、参院選公約に「被選挙権年齢引き下げ」盛り込みへ』や『若者たち自身が動かした!「若者担当相」「被選挙権」等が公明党参院選重点政策に!』等でも紹介してきました様に、当事者である大学生や高校生など若者たちとも連携しながら各党に働きかけ、2016年の参議院選挙では、ほぼ全ての主要政党の選挙公約に反映する事ができました。

参院選挙直後の臨時国会では日本維新の会が「被選挙権年齢18歳引き下げ法案」を提出し、衆参国会議員のほか都道府県市区町村の議員と首長の全ての被選挙権を18歳に引き下げるとしたほか、民進党も社民党、自由党などと共同で、被選挙権年齢を現行から5歳ずつ引き下げる等とした法案を提出しました。

いずれも野党による法案提出であり結果的には廃案となりましたが、与党自民党が冒頭の方向で今国会にでも被選挙権年齢引き下げに向けた公職選挙法改正案を提出すれば、野党側にとっても反対をする理由はありません。

海外における被選挙権年齢引き下げと日本における「18歳被選挙権」の可能性

図表: 18歳被選挙権や16歳選挙権を取り巻く海外の流れ

出典: 高橋亮平作成

冒頭の報道では、今回の被選挙権年齢は一律で20歳に引き下げる方向での検討という事でしたが、筆者は今後さらに被選挙権年齢についても18歳まで引き下げるべきだし、また引き下げられるだろうと考えています。

被選挙権年齢については、「18歳被選挙権」になっているヨーロッパ諸国においても引き下げ時におけるその考え方は大きく異なります。

スウェーデンは「選挙権と被選挙権は同じ年齢であるべき」との考えから同時に引き下げ、イギリスは別々に後になって「被選挙権年齢」を単独で引き下げとなっている一方で、ドイツにおいては「被選挙権年齢は選挙権と一緒ではなく、成人年齢と合わせるべき」との考えで、「被選挙権年齢を成人年齢へ引き下げ」を行なった上で、段階的に「成人年齢が18歳に引き下げられると同時に18歳に引き下げ」られました。

日本において被選挙権年齢を「20歳」という年齢にする理由は「成人年齢と合わせる」という事以外には考えづらく、今国会で「18歳成人法案」が提出され予定通り2012年から「18歳成人」という事になれば、この際には「18歳」に合わせざるをえなくなると考えているからです。

高橋亮平が代表理事を務めるNPO法人Rightsでは、2000年の立ち上げから若者の政治参加促進を目的に、選挙権・被選挙権年齢引き下げを求め活動を続けてきました。

2007年の国民投票法成立に向けて投票年齢を18歳にする事と共に、選挙権年齢引き下げについても何らかの形で触れる事を働きかけて以来、公職選挙法改正についてもあらゆる形を用いながら与野党に働きかけてきました。

2度の国会での参考人招致でも高橋亮平は、選挙権年齢引き下げだけでなく、被選挙権年齢引き下げをと求め続けて来ました。

ようやくここまで来たかと感慨深くなる一方で、確実に被選挙権年齢引き下げにつながる様、最後の最後まで様々な形で働きかけていきたいと思います。