人材の流動化を計るには、就業形態を段階的に変えていく

2018年02月21日 06:00

「フリーランスに最低報酬 政府が検討、多様な働き方促す」という記事が日本経済新聞で報じられた。

一つの会社でしか通用しない硬直的な働き方を柔軟にし、会社との運命共同体的関係を緩和し、人材の流動化を図り、成長産業に有能な人材が流れることを、政府は目的としていると推測される。

その背景には、米中の先端企業の成長が著しいのに比べ、日本から成長産業がなかなか生まれてこないという危機感があるのだろう。

これは、時価総額の上位企業やユニコーン起業のほとんどを米中の企業で占められている状況を見れば明らかだ。このままでは、日本は旧態依然たる起業にばかり人材が滞留し、新しい成長産業を担う人材が枯渇してしまう。

また、ブロックチェーン技術が進歩して普及すれば、中央集権的組織は不要となる。個々人や小規模組織同士の水平分業が「世界標準の働き方」になると、中央集権システムに依存してきた日本人の労働の機会が奪われるという危機感もあるのかもしれない。

実際、米国では就労者の約3分の1がフリーエージェントとして働いており、新しい産業形態(ウーバー等のシェアリングエコノミー)の柔軟な担い手になっている。

そうはいっても、いきなりフリーランスを増やすのは今の日本では困難だ。就活を控えた大学生が「安定」と「年功序列」を求めているように、わが国では生活の安定が最優先される傾向が強い。

いきおい、収入が不安定なフリーランスとしての働き方は敬遠されるだろう。

このような環境下にある日本で、フリーランス(わけても高度な技能を持つフリーエージェント)を育てるには、段階を踏む必要があると私は考える。

まず、「副業」を禁止する就業規則を一律違法とし、雇用者の承認を得れば本業に支障のない副業を全面的に認めるという法改正が必要だ。

本業に全く支障のない副業を全面的に禁止する就業規則が違法であるという判例がずいぶん以前に出ているにもかかわらず、いまだに副業全面禁止の就業規則が残っているのは極めて遺憾なことだ。

余計な時間外労働を減らすことも、フリーランスとして副業に従事する条件の一つだ。

現在は、最大でも時間外手当が通常の1.5倍になっているが、時間外労働が長くなればなるほど手当が高額になるよう法律を変更する。

時間外手当が2倍、3倍になれば人件費が高騰してしまうので、会社としては余計な残業を禁止するようになるだろう。

そうなればサービス残業が増えるのではという危惧があるが、ここは労働基準監督署に「サービス残業窓口」等を設置して、サービス残業や在宅業務を強いている会社への罰則を強化すべきだ。

また、フリーランスの仕事の多くは時間単位で換算できるものではないので、「同一労働、同一賃金」ではなく「同一成果、同一賃金」という指標を取り入れることも必要になるだろう。

これは、正社員とフリーランスの間での比較の指標としても用いる。

同じ成果を上げたのであれば、正社員と同等の報酬を支払うという原則を徹底し、フリーランスの報酬が低ければ独禁法の「優越的地位の乱用」として企業側を厳しく処分する。

成果の同一性をどのように測るかは業務内容によっては困難な場合が多という難点はあるが、測定しやすいものから順次取り入れていくしかないだろう。

同一成果と認定される事例が集積されれば、次第に不公平は解消されていと期待している。

メンタル面での「会社丸抱え」を解消することも日本では極めて重要な要素だ。

一つの会社に最大限の忠誠を尽くすことが日本では美徳と考えられている節が強い(「貞女二夫に見えず」と同じと揶揄されている)。社会船体のメンタル面の問題は政府主導で変えていくしかない。

「会社はあなたの仕事の場のポートフォリオに過ぎず、忠誠心を尽くす場ではない」というメッセージを政府が発し、強引に忠誠を尽くさせようとする会社側の行為を禁止する方策も検討すべきだ。

メンタル面での転換は、不要なサービス残業を止めようというモチベーションにもつながる。

その代わり、会社側も従業員丸抱えの呪縛から開放する必要がある。

解雇規制の撤廃・緩和はもちろんのこと、成果に基づかない年功賃金体系を「平等に反する」として違法と明記すべきだ。「弊社の仕事では君の給料は下がることはあっても上がることはない。もう一つ(もう二つ)の職場にエネルギーを注げばどうか」というアドバイスは決して残酷なことではない。

また、仕事のポートフォリオを複数持つのが当たり前になれば、解雇規制を撤廃しても就労者の生活が破綻することはない。

このような措置は決して突飛な発想ではない。

弁護士、司法書士、開業医などは、一件ごとに仕事を請け負っており、案件が終了すれば依頼者等との関係は終了する。

その代わり、依頼者に私生活まで拘束されるようなことはない。

仕事のポートフォリオを多数持つようになれば、普通の就労者でも「自分の得意分野」を見極めることができ、持てる能力を発揮できるようになる。

一気に就業形態を変えるのは困難かもしれないが、以上のように段階を踏んで変えていけば不要な摩擦も生じないだろう。

「10年前は一つの会社に骨を埋めるのが普通だったなんて信じられないよ」と笑い合う日が、遠からずやってくると信じている。

中学受験BIBLE 新版
荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年2月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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