【映画評】ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

2018年02月24日 06:00
ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

クメイルは、シカゴに住むパキスタン移民二世のアメリカ人。パキスタンやイスラムの自虐ネタで笑いをとる駆け出しのコメディアンだ。そんな彼は、客席からヤジをとばしてきた白人女性エミリーと交際するようになる。だが、同郷でイスラム教徒の女性との結婚しか認めない家族に逆らえず、破局してしまう。落ち込むクメイルに、数日後、エミリーが原因不明の病で昏睡状態になったとの知らせが。病院にかけつけたクメイルだが、エミリーの両親から、娘を傷つけた男といって冷たくあしらわれてしまう。しかし、ある出来事がきっかけで、クメイルとエミリーの両親は互いに心を開きはじめる…。

パキスタン移民二世のアメリカ人コメディアン、クメイル・ナンジアニの実話を映画化したハートフルコメディー「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」。脚本をクメイルとパートナーのエミリー本人が共同で執筆し、クメイル自身が主人公を演じるこの小品は、異文化ロマコメとしてスタートするが、中盤以降、クメイルとエミリーの二人の前には、カルチャーギャップだけでなく、コメディアンへの夢、家族との絆やアイデンティティ、エミリーの難病など、大問題が立ちふさがる。これほどの難局をどう乗り切る?! 心配ご無用。コメディアン、脚本家、俳優として成功し、ついには自分の波乱万丈の恋を映画化した男クメイル・ナンジアニは、愛と勇気とちょっぴり辛口のユーモアを武器に、この異文化交際の荒波を乗り切ることになる。

人種差別や偏見、家族との価値観の相違など、一筋縄ではいかない問題が山積みなのに、映画は決してシリアスに傾かず、軽妙なユーモアを忘れない。クメイル・ナンジアニ本人は言うまでもなく、エミリーを演じるゾーイ・カザン(名匠エリア・カザン監督の孫です!)、エミリーの母ベスに扮するホリー・ハンターら、役者陣は皆、好演だ。人生は思ったよりハードだけど、愛とユーモアがあれば大丈夫。そんな古風でポジティブなメッセージがいっぱいつまったこの低予算コメディーが、不寛容の風が吹きまくる現代アメリカで大ヒットしたという事実に拍手を送りたい。
【70点】
(原題「THE BIG SICK」)
(アメリカ/マイケル・ショウォルター監督/クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンター、他)
(クロスカルチャー度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年2月23日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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