学校を勉強する場所に変えるために

2018年02月26日 17:00

前回のわたしの記事は、教師の傲慢さを肯定していると一部で誤解されているのですが、「現状はこうなっていますよ」と示してそれに疑義を呈する形で「現状の公教育は変えていくべきだ」と申し上げています。

教員の人間力に頼った学校経営の大きな問題

教員の人間性というか人間力に頼った学校経営は、多くの子供を傷つけているのではないかということです。「ゆとり」(今の言葉でいうとアクティブラーニング)か「詰め込み」かという「上澄み」の「教科指導」の部分の議論に始終して、「ほんとうの学校問題」に切り込んでこなかった文科省や教育委員会の無為無策を指摘しているのです。

「態度指導」することによって、学校の秩序を維持している現状は、子供たちはもちろんのこと、教員にとってもハッピーではないと言えます。「人間力」のない教員が安心して指導できるような「制度」を作ることが、子供たちの安心感にもつながるのです。

教師の「態度指導」は暴走を招きやすい

そして、「態度指導」偏重の教員たちの暴走が、ブラック部活であったり、10段ピラミッドであったり、二分の一成人式だったりするのです。

実際に、学級崩壊するようなクラスのほうが圧倒的に少ないのですが(学級崩壊が多ければ、多くの学校は崩壊しています)、崩壊した場合ほんとうに悲惨の一年間になります。それを糊塗しようとさらに力で抑えつけようとする。学級崩壊していない、とても素直な子供が集まった学級でも、この「態度教育」の「暴力性」を発揮する教員もいるので、子供たちがほんとうに気の毒なのです。

教師の裁量が入らなくても学級経営ができるしくみに

しっかりとした基準を設け、「児童生徒がこういったことをしたら別室で指導する、出席停止にする」といった客観的な基準を提示することによって、けっきょくは、学級の安定を得られるものになるでしょう。(児童生徒の学習権をうばうのかという批判に足がすくんで、こういった制度は運用されていません)

いちばんの問題は、教員の「態度指導」は、秩序を維持するための「必要悪」ですが、それが子供たちの思考を歪めているということです。たしかにどの学級にも、数人は問題のある児童生徒がいます。そのために過剰な「態度指導」が行われています。「ふつう」で「おとなしい」多くの児童生徒にとっては、その「態度指導」の悪影響は甚大なのです。

なぜ日本の公教育では自分で考える力が身につかないのか

一般には、1+1=2のような答えのある問題ばかりをやっているから、創造性が実らないのだと言われますが、じっさいはこの「態度指導」が10年近くなされることによって、枠からはみ出さないことがいかにいいことで合理的だと刷り込まれてしまいます。「生きる力」はなくなり、サラリーマンや公務員のような「道を外れない」生き方がいいのだなと思うようになるでしょう。

実際、さいきん高齢化が問題になる「就職氷河期」「ロスト・ジェネレーション」と言われている人たちは、けっして学力が低かったわけではないでしょう(だって18歳人口が今の2倍もいたのだから、大学受験の上位層の競争はかなり激しかったはずです)。このときに「生きる力」があれば、サラリーマン以外の道に進んで景気回復を待つという選択肢も見つけることができたかもしれません。けれども、この世代の多くの人にとって、道を外れた生き方を選択することはむつかしいことでした。これは「道を外れない」ということを徹底した学校での「態度指導」によるものではないかと、わたしはにらんでいます。(この「ロスト・ジェネレーション」の人たちが他国のように暴動を起こさないのも、「態度指導」の成果かもしれませんが)

じゃあぁ、その「態度教育」をとっぱらってしまえばいいかといえば、そうなると学校は無秩序になってしまいます。この部分を解決しなくては、「生きる力」の追究は夢想としか言いようがありません。学力論争は「上澄み」を議論している間に、学校現場からほんとうに遠くへ行ってしまった感があります。

「態度教育」する場ではなく勉強をする場に

教員の現場裁量による「態度指導」ではなく、逆説的ですがどんなに「態度教育」ができない教員が教壇に立っても、学級・学校がうまくまわる制度を作ることが、子供たちの「生きる力」を高めるのではないでしょうか(少なくとも低めはしないと思います)。この部分に光があたらない限り、つまり教育改革の本丸は、「教科指導」ではなく「態度教育」にあると気づかない限り、教育改革は三たび画餅に終わるでしょう。

そもそも、政治や経済の停滞を学校教育で何とかできると思っている人は、楽天的過ぎる気がするけどね。

中沢 良平(元小学校教諭)

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