「赤い水玉模様の傘」がどちらかわかりますか!?

例題:「赤い水玉模様の傘」がわかりますか


「第一印象がマイナス評価だ」「自分の気持ちを上手に伝えられない」「大勢の前だとあがってしまう」「人と思うようにコミュニケーションがとれない」「会議で発表する機会を活かしきれていない」「上司に説得力ある説明で認められたい」。そんな悩みを抱える方は少なくない。この原因は「声と言葉の使い方」にある。

今回紹介するのは『声と言葉のプロが教える伝わる話し方』(秀和システム)。著者は、のざききいこさん。CM、番組ナレーション、アニメ、洋画の吹き替えなど声の世界に携わっている。主な実績に、「ドン・チャック物語」のララ役、NHK「着信御礼!ケータイ大喜利」、皆さまお馴染み「おふろが沸きました」の音声ガイダンスなど幅広い。

「フレージング」とはなにか

――「フレージング」をご存じだろうか。「フレージング」は、区切り法のことで、言葉の意味をわかりやすく伝えるために、言葉の区切りに気を配ることを指す。文章に例えれば、句読点をどこでつけるかで意味合いが変わってくるのと同じように、「フレージング」を間違えると意味合いがまったく変わってしまう。

「『フレージング』は、聞き手にわかりやすく伝えるために、国語でいえば文法のような視点で行う言葉の整理ですから、言葉を発声する前に行う作業です。声と言葉はワンセットです。美声でも、言葉の整理ができていなければ伝わりません。」(のざきさん)

「友人に英子さんという人がいます。英子さんは、ニュースの見出しで『損保会社英子会社を売却』と見て、『英子、会社を売却』と理解したそうです。本当は『英・子会社を売却』なのですが、自分の名前が英子だけに、もっともな話です。このような例は、英子さんだけに限ったことではありません。」(同)

――ここで質問を考えてもらいたい。「野崎という先生の友人」という文章になる。皆さまには、先生の名前がわかるだろうか?

「先生の名前は、野崎だと思いますか?それでは、友人の名前はなんでしょうか?実は、この文章だけですと、言い方次第で、野崎さんは、先生にも、友人にもなれるんですね。言い方次第では、野崎さんは先生なのに、友人になってしまったり、本当は友人なのに先生になってしまうという、大変な間違いが起きてしまいます。」(のざきさん)

「プロのアナウンサー、ナレーターが原稿を読み上げるときに、真っ先に行うのがこの『フレージング』の作業です。なぜなら、間違った『フレージング』で間違った意味合いに伝えると、クレームの元になってしまうからです。」(同)

「赤い水玉模様の傘」はどっち

――記事の画像を見てもらいたい。2つの傘の絵が描かれている。「赤い水玉模様の傘」がどちらかわかるだろうか。そして、違いが説明ができるだろうか。

「どちらも『赤い水玉模様の傘』ですが、音声にした場台は明らかに違います。上の絵の傘は、『赤い V 水玉模様の傘』で、水玉模様の前でのフレージングです。下の絵の傘は『赤い水玉模様の V 傘』で、傘の前のフレージングです。このように、フレージングの箇所で意味合いが変わりますので覚えておいてください。」(のざきさん)

「文章で表す、フレージングは句読点ですが、音声で表す、フレージングは、『ブレス(息継ぎ)』で行います。『ブレス』をすることで、次の言葉が新しく始まります。このように、間違ったフレージングをすると、不自然になってしまいます。」(同)

――フレージングは、文章の読点からも理解することができる。読点の打ち方で、文章の意味が変わるから注意が必要になる。

A.妻は、嬉しそうに笑う彼を見つめた。
B.妻は嬉しそうに、笑う彼を見つめた。

Aでは、嬉しそうに笑っているのは彼になる。Bでは、笑っている彼を妻が嬉しそうに見つめている風景になる。さて、筆者も、新刊を上梓したので関心のある方は手にとってもらいたい。フレージングの理解を深めるために参考になるかも知れない。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト