歴史的な米朝首脳会談はどこで?

2018年03月13日 11:30

トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩労働党委員長の要請を受け、5月までに米朝首脳会談を開催することに合意して以来、歴史上初の米朝首脳会談がどこで開催されるかが大きな関心を呼んでいる。

▲訪米団から報告を受ける文在寅大統領(韓国大統領府公式サイトから)

▲訪米団から報告を受ける文在寅大統領(韓国大統領府公式サイトから)

日韓米のメディアによれば、開催地として挙がっている都市は平壌、板門店の韓国側施設「平和の家」、ソウル、そして避暑地の済州島だ。海外の開催地としてはスイス外務省が9日、早々と首脳会談の開催地に手を挙げ、「関係国と話し合いを始めている」と発表したばかりだ。

欧米メディアが「欧州の2国の中立国が開催地として有力視されている」と配信した時、当方は「ひょっとしたらウィーンだろうか」と心躍らせたほどだ。オーストリアは中立国だ。条件を満たしている、しかし、記事は「スイスの他に、スウェーデンの名前が挙がっている」と報じた。ウィーンの名前を挙げたメディアは見つからなかった。

スイスのジュネーブには欧州の国連本部があり、国際会議が頻繁に開催される都市だ。大きな北朝鮮大使館もある。金正恩氏は1996年、スイスのベルンのインタナショナルスクールに偽名で留学していたことは良く知られている。スイスは金正恩氏にとって未知の国ではない。米国にとってもスイス開催で大きな障害はないはずだ。スイスはさまざまな対北支援を実施してきた数少ない欧州の国でもある。

一方、スウェーデンは北欧の国であり、ジュネーブと同様、さまざまな国際会議が開催されてきた。同国のメディアによれば、北朝鮮の李容浩外相が近日中に同国を訪問し、マーゴット・バルストロム外相と会談する予定という。ひょっとしたら、両国間で米朝首脳会談の開催について話し合われるかもしれない。ちなみに、スウェーデンは平壌に大使館を持っている。同大使館は、北と国交がない米国の代理も務めている。すなわち、同国は米朝両国と深い繋がりを有しているわけだ。

ところで、米ホワイトハウスのサンダース報道官は9日、開催地として平壌は願わないと表明した。どのような理由があるとしても、米国が願わないとすれば、北側は受け入れる以外にないだろう。

そこで、上記の欧州の2都市と板門店が有力視されることになる。韓国の首都ソウル開催も考えられるが、韓国内には反北勢力があって、金正恩氏がソウル入りすれば、大きなデモが起きる可能性が考えられるから、治安上難しいだろう。平昌冬季五輪大会の閉会式(先月25日)に参加した北使節団の訪韓の際、団長の金英哲朝鮮労働党統一戦線部長氏が2010年3月の韓国海軍哨戒艦沈没事件の主導者だったということから、遺族関係者ら多くの国民が訪韓反対のデモを行っている。

問題はなぜウィーンが米朝首脳会談の開催地から外されたかだ。ウィーンは第3の国連都市であり、核問題を扱う国際原子力機関(IAEA)の本部がある。1990年代、北朝鮮の核問題はIAEA理事会の大きなテーマであり、喧々諤々の議論が行われた場所だ。北が過去、6回の核実験を実施した時、ウィーンの国連内にある包括的核実験禁止条約(CTBT)機関が地震データを集め、加盟国に送信する役割を担った。北朝鮮の非核化を協議する会議としてはウィーンは理想的な開催地だ。にもかかわらず、ウィーンは名前すら上がらなかった。

スイスは過去、1994年からの核関連の米朝協議や、85年11月の米レーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長の会談の舞台になった。一方、ウィーンは冷戦時代、東西に分断されてきた欧州の架け橋的役割を果たし、1961年6月3から4日まで、ジョン・F・ケネディ米大統領とニキータ・フルシチョフ・ソ連共産党第1書記の米ソ首脳会談が開催された。過去のビッグ会議の開催実績では、ウィーンはジュネーブには負けていない(「ウィーンで米朝首脳会談を」2017年9月3日参考)。

当方の推測だが、オーストリアの首都ウィーンが過去、北の欧州拠点だったからではないか。ウィーンには北直営の銀行(金星銀行)が1982年、開行した。同銀行は北の欧州の工作拠点であり、武器密輸、麻薬取引、米ドル紙幣の偽造(スーパー・ドル)など不法活動を行ってきた。要するに、ウィーンは北朝鮮に余りにも近いことから、そのウィーンでの首脳会談開催に米国の強い反発があるからではないか(「ウィーンで展開された『北』工作活動」2017年11月29日参考)。

金正恩氏は父親の故金正日総書記のように飛行機恐怖症ではない。戦闘機に搭乗する金正恩氏の写真が配信されたことがある。米朝首脳会談が欧州の都市で開催されたならば、金正恩氏は飛行機を利用できる。
厄介な点は、技術的な意味ではなく、金正恩氏の身辺問題だ。ひょっとしたら、平壌国際空港から飛び立った金正恩氏の搭乗機が途中、飛行ルートの変更を強いられ、、国際刑事裁判所のあるオランダのハーグに向かうかもしれない。どこかの国の戦闘機に撃ち落とされる危険性も完全には排除できない。金正恩氏は自身の危機管理を考え、米朝首脳会議の欧州開催には抵抗があるかもしれない。

以上、考えていくと、板門店の韓国側施設「平和の家」での開催がやはり無難という結論に落ち着く。もちろん、サプライズは排除できない。例えば、米国のニューヨーク国連での開催だ。ニューヨークと平壌間の行き来は米空軍機が担当し、ゲストの安全は保障するという条件でだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年3月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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