【映画評】リメンバー・ミー

2018年03月19日 11:30
リメンバー・ミー オリジナル・サウンドトラック

天才的なギターの才能を持つ少年ミゲルは、ミュージシャンになるという夢を抱いていたが、過去のある出来事が原因で、楽器や歌はおろか音楽に接することさえ禁止されていた。ある日、年に一度の“死者の日”に開催される音楽コンテストにこっそり出場すると決めたミゲルは、伝説的ミュージシャンであるデラクルスの霊廟に飾られたギターを手にして出場するが、ギターを弾いた途端に死者の国に迷い込んでしまう。早く元の世界に戻らないと、ミゲルの体が消えて永遠に家族と別れることに。困ったミゲルは、偶然出会ったヘクターという陽気なガイコツの助けを借りることになるが、それは想像を超える冒険と真実へとミゲルを導いていく…。

死者の国を舞台に家族の絆を歌いあげる秀作アニメーション「リメンバー・ミー」。陽気な音楽、カラフルなビジュアル、家族の愛と絆。王道の設定ながら、死を受け止め生を肯定するエモーショナルな物語にあっという間に引きこまれた。“死者の日”とは、年に一度故人の魂を迎えるメキシコの祭りのこと。日本のお盆のようなイメージで親しみがわくが、何しろラテンのノリなのでどこまでもカラフルで陽気だ。主人公ミゲルが迷い込む死者の国は、巨大都市でダイナミックな色彩に彩られている。だがこのにぎやかな世界にも、生きている家族から忘れられると、死者の国からも存在が消えてしまうというシビアなルールが。陽気だが孤独なヘクターは、そんな2度目の死の危機に瀕していて、それがミゲルの家族の謎ともからみあい、大冒険へとつながっていく。

近年、ピクサーは続編やシリーズものを多く製作していたが、今回はオリジナル。それだけでも高評価だが、死者の国を特定の宗教ではなく、この世とあの世という感覚で描いて間口を広くしている点が素晴らしい。ラテン文化へのリスペクトもしっかりと伝わってくる。劇中、ある人物による大きな秘密が暴かれるが、そのくだりが少々雑なのが惜しい。それでもベタと思いつつも、家族や先祖から伝わる愛といった定番の感動スポットに、名曲“リメンバー・ミー”のメロディーが重なって、気が付いたら涙していた。原題「COCO」の意味を知って、またまた涙。マリーゴールドの花のオレンジ色が光り輝いて見えるのは、その魔法のような映像美だけでなく、押し寄せる感動のためだったのだ。生きる素晴らしさを歌いあげた、宝物のような映画である。
【85点】
(原題「COCO」)
(アメリカ/リー・アンクリッチ、エイドリアン・モリーナ監督/(声)石橋陽彩、藤木直人、松雪泰子、他)
(家族愛度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年3月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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