韓国“パリパリ”でノーベル賞受賞は無理!

長谷川 良

韓国民族の民族性を適切に表した言葉に「パリパリ(早く早く)」という韓国語がある。パリパリが効果をもたらすこともあるが、そうでない場合も少なくない。ましてや、ノーベル平和賞を受賞しようとパリパリしても無理があるばかりか、相手側から反発を買うことにもなる。

▲文大統領、南北、米朝首脳会談について安倍晋三首相とトランプ米大統領と電話会談(2018年3月16日、韓国大統領府公式サイトから)

▲文大統領、南北、米朝首脳会談について安倍晋三首相とトランプ米大統領と電話会談(2018年3月16日、韓国大統領府公式サイトから)

韓国の文在寅大統領が南北両国の緊張関係を改善し、平昌冬季五輪大会で南北合同チームを編成するなど朝鮮半島の緊張緩和に貢献があったという理由でノーベル平和賞候補者に推薦しようとする動きが韓国国内で起きている。具体的には、ノーベル平和賞受賞を推薦する委員会の結成が進められているというのだ。

来月には南北首脳会談が開催されることになっているが、100%確実ではない。そんな時に、文大統領のノーベル平和賞受賞支援委員会を設置するというのは余りにも早急過ぎる感がする。

中央日報(日本語電子版、19日)によると、「 大韓民国職能フォーラムは20日、職能フォーラムの会長団など30人余りが集まり『文在寅大統領ノーベル平和賞推進委員会』を結成し、初めての発起人会議を行う予定だ」という。彼らは5月8日、国会憲政記念館で文大統領就任1周年記念式を開催して推進委創立大会を行うというのだから、パリパリ民族の面目躍如といったところだが、やはり少々馬鹿げている。

問題は、文在寅大統領をノーベル平和賞に推薦する一方、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の3人共同受賞の道を考えているというのだ。文大統領は別として、何十万人の国民を政治収容所に送り、宗教の弾圧を繰り返す北朝鮮の金正恩氏も文大統領とトランプ米大統領と共にノーベル平和賞受賞候補者に推薦することは、ノーベル平和賞の終わりを告げる自殺行為に等しい。

南北関係の雪解けは、核実験と弾道ミサイル発射を繰り返した結果、国際社会から制裁を受けた金正恩氏がやむ得ず、融和政策に乗り出した結果だ。そんなことは朝鮮半島専門家でなくても分かる。にもかかわらず、金正恩氏がノーベル平和賞の受賞候補者に相応しいと真剣に考える人間が韓国内でいるわけだ。あの世のノーベル氏は「俺の名前を付けないでくれたまえ」と嘆願するだろう。

北の金王朝の人権蹂躙と弾圧は天にも届く非道な蛮行だ。それを繰り返してきた金正恩氏がノーベル平和賞候補者に上げられていると聞けば、世の独裁者を鼓舞するかもしれないが、多くの人は少し早いが4月1日のエープリルフールかと考えるかもしれない。

トランプ大統領の場合は、大統領就任直後、核廃止演説以外の実績がなくてもノーベル平和賞を受賞したオバマ前大統領がいるから、ノーベル平和賞もおかしくないが、金正恩氏の場合は戦争犯罪人としてハーグ送りとなる独裁者だ。過去、ノーベル平和賞を受賞した人々への侮辱ともなる。

問題は、文大統領の場合、南北首脳会談や冬季五輪の南北行進も金正恩氏の受諾がなければ実現できなかったのだから、金正恩氏を除いて文大統領だけが受賞というわけにはいかない、という考えだ。確かに、文氏は金正恩氏と運命は共同だ。独裁者の金正恩氏に媚びて南北融和政策を実施してきた文大統領は、自分だけがノーベル平和賞を受賞するわけにはいかないのだろう。それならば、金正恩氏がノーベル平和賞の候補者とならないためにも、自身の候補を断念すべきだ。

韓国では過去、故金大中氏が金正日総書記との南北首脳会談を実現し、太陽政策を提唱したという理由で2000年ノーベル平和賞を受賞したが、金大中氏からプレゼントされた巨額の資金で北は核兵器製造を推進したことが後日明らかになっている。韓国民の中には「金で買ったノーベル賞」と揶揄する声も多かった。同じような赤恥をかかないためにも、文大統領は推進委員会の設置を自ら断る勇断を示すべきだろう。

金大中氏以外のノーベル賞受賞者がいない韓国では、何がノーベル賞受賞に値するかの理解に欠けているように思う。科学・医学、化学部門では地道な基礎研究が欠かせられない。パリパリでは難しい。ノーベル賞は決してスポーツ競技ではないのだ。ノーベル平和賞は一時的な平和ではなく、持続的な平和構築者に与えられるべきだ。独裁者への媚びや政治的パフォーマンスで受賞できるものでは本来ない。韓国人のノーベル賞受賞者が出ないのは、韓国民族のパリパリ気質が大きな障害となっているのではないだろうか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年3月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。