佐川氏証人喚問だけでは全容は分からない。3人のキーパーソンに話を聞け

森友学園の問題がますます広がりを見せています。

次々に隠されていた事実が出てきて、これまでの安倍総理や麻生財務大臣らの国会答弁の多くがウソだったことが明らかになりつつあります。

昨年からこの問題を国会で取り上げてきた私自身、憤りとともに、何とも言えない悲しみを感じています。

やっぱり、これまで指摘していたとおりだったではないか、との思いがあるし、なぜ、もっと早く非を認め、こんなに問題が広がる前に対処しなかったのか。「引き返せる」局面は何度もあったはずなのに、なぜ、ルビコン川を渡ってしまったのか…

決裁文書を改ざんするといった前代未聞の事態は、我が国の統治機構そのものに対する信頼を根底から傷つけるものであり、断じて許されません。

加えて、国民に正しい情報が提供される前提が崩れれば、選挙を通じた国民の選択も「正しく間違って」しまい、議会制民主主義の根幹を破壊してしまうことになります。真実が隠されたまま行われた昨年の総選挙や安倍政権の正当性にも疑問符がつきます。

今、何よりも必要なのは、真実をすべて明らかにすることです。

その意味で、27日に佐川前理財局長の証人喚問が決まったことは一歩前進ですが、これは全容解明に至るほんの入り口に過ぎません。

刑事訴追のおそれがあるとして証言拒否も予想されますが、佐川前局長には、包み隠さず真実を語ってもらいたい。それが、高い志を持って大蔵省の門をたたいたであろう佐川前局長が果たすべき最後の「公務」のはずです。

そして、決裁文書の改ざん問題ばかりに関心が集まっていますが、問題の核心は、やはり、もともとの土地取引です。国有地の処分に係る賃料や価格の算定に関して、隠さなければならない何らかの「やましさ」があったのではないか、そして、その「やましさ」の背景に、現職の総理夫人の存在や影響があるのではないか、国民が本当に知りたいのはこの点です。

とにかく、本件には、通常考えられない「特例」が幾重にも積み重なっていて、その特例の背景に一体何があるのか、丁寧に解明していかなくてはなりません。

以下に、今後、明らかにすべき疑問点を整理してみました。

また、真相解明のためには、昭恵夫人に加えて、夫人付の谷査恵子さんや佐川前理財局長の前任者である迫田元理財局長にもぜひ話をしてもらいたいと思いますが、土地取引の交渉に実際に関わった実務者に話を聞くことが重要です。

重要な実務者として、3人のキーパーソンがいます。あわせて説明したいと思います。

特例① なぜ、借地の上に校舎を建てるという基準違反を認めたのか。

そもそも、大阪府の審査基準では、借地の上に「校舎」を建てることは認められていません。あくまで土地は「自己所有」ではならなかったのに、なぜ、国からの貸し付けによる借地での建設が認められることになったのか。この入口の段階での基準違反がなぜ認められたのか。

まさに、これが「特例承認」の核心です。

そして、ここには、近畿財務局だけでなく大阪府も深くかかわっています。

本来、認められない借地に、なぜ小学校校舎の建設が認められたのか。そこにいかなる力が働いたのか、とりわけ、2014年4月25日の昭恵夫人の現地訪問が、この「特例」にどのよう影響を与えたのか、そして、本省理財局は、どのような判断に基づき特例承認を決裁したのか。

ここがまさに、本件において一番重要なポイントだと考えます。

特例② なぜ、たった3か月で不動産鑑定をやり直して賃料を下げたのか。

2015年5月の土地の賃貸借契約に先立ち、近畿財務局は、同年1月、賃料4200万円/年の算定根拠となる不動産鑑定書を受け取っています。

しかし、わずか3か月後の同年4月に鑑定をやり直し、「軟弱地盤」に関する評価を180度変えた再鑑定が出ます。(比較したものはこちら

その結果に基づき賃料を3600万円/年に値下げします。

さらに、公租公課を特例的に控除することにした結果、さらに2730万円まで引き下げ、賃料は当初のものと比べて35%引きとなりました。

なぜ、こうした大幅な賃料の値下げが可能だったのか、この一連の賃料値下げに政治家等の影響がなかったのか、再鑑定は財務局からの指示で値下げありきで行われたのではないか、疑問は尽きません。

真相を明らかにするためにも、短期間に2回の鑑定を行った「株式会社難波不動産鑑定」に話を聞いて、財務局からどのような依頼や働きかけがあったのか、なぜ、わずか3か月で「軟弱地盤」に関する評価を変えたのか確認する必要があります。

難波不動産鑑定には、全面的に調査に協力していただきたいと思います。

特例③ なぜ、8億円もの根拠なき値引きが行われたのか。

いわゆる8億円の値引きについて、これまで総理も大臣も適切だったと繰り返し答弁してきましたが、ごみの深さは虚偽であったとの報道も出てきており、やはり「根拠なき値引き」だった疑いが高まっています。

実は、会計検査院が昨年の総選挙直後の11月に出した報告書にも、8億円の算定の根拠となった、3.8mや9.9mといったゴミの出た「深度」、47.1%のゴミの「混入率」、2万2500円/トンの「処分単価」のいずれも、その根拠を確認することができなかったとしています。

つまり、会計検査院は8億円の値引きに全く根拠がないと言っているのです。

そうであれば、8億円を差し引いた売却は「適正な対価をもって売り払わなくてはならない」と求める財政法9条違反の可能性もあります。

こうした不可解な値引きがなぜ行われたのか、実は、この背景をすべて知っている人物が2人います。

その一人が、かつて籠池氏の代理人を務めていた酒井康生弁護士です。(事案が発覚して突如辞任しています)近畿財務局との交渉の前面にたっていた人物でもあり、彼はゴミがなかったことも、近畿財務局から「机上の計算でも構わない」と示唆を受けたこともすべて知っているはずです。政府も国会も、本気で全容解明したいなら、まず、酒井弁護士から話を聞くべきです。

そして、値引きの真実を知っているもう一人の人物が、近畿財務局の池田靖・総括国有財産管理官です。彼はこれまで明らかになった各種の録音テープやメールに何度も出てくる人物です。やはり、全容を知る実務者として、真実を話してもらわなければなりません。

とにかく、佐川前局長に話を聞くだけでは全容解明にはつながりません。

上で述べた疑問点に答えるためにも、本件土地取引に現場で直接関わった、①株式会社難波不動産鑑定、②酒井康生弁護士、③池田靖総括国有財産管理官ら関係者からの聞き取りを実施し、速やかに調査結果を国会に報告すべきです。

交渉に実際に関わった人物の証言がなければ、実のある審議にはなりません。

いずれ検察の捜査や会計検査院の再検査によって真実が明らかになっていくでしょうが、それを待って受動的に対応するのではなく、能動的に事実の解明に努めるべきです。

捜査、検査で新たな事実が明らかになってから、事後的に言い訳じみた説明をするのでは、政府への信頼は決して回復しません。

政府ぐるみの隠ぺいとの批判を払しょくするためには、安倍政権や自民党が、積極的に自浄作用を示すしかないのです。

失われた行政組織への信頼を取り戻すためにも、政府一丸となって全容を明らかにしてもらいたいと思います。


編集部より:この記事は、希望の党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年3月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。