IT敗戦を繰り返すICT教育がオワコンのこれだけの理由

2018年03月25日 12:00

山田肇先生が、情報の教育化で奮闘されています。「教育での情報通信の活用と教員の壁」「プログラミング教育の目的は何か」といった論考は、まったくそのとおりですし、教育現場としては歓迎すべきことです。けれども、「日本の」教育のICT化はおのずと失敗する理由があります。

企業の失敗を忘れてはならない

90年代後半から、2000年代初頭にかけて、日本の民間企業はIT化の波に乗り遅れ、諸外国の企業と生産性の差が広がりました。これは、アメリカや欧州の企業はITに合せて組織を改編することができましたが、日本企業は、終身雇用などが足かせとなり、組織や業務にITを合わせようとし、多くの企業は無残な失敗に終わりました。カジュアルに解雇もできないので、IT化するインセンティブも少なかったです。

これが失われた20年か30年のひとつの大きな要因になったのは、当時日本企業にいらした方なら、ほろ苦く思い出されるのではないでしょうか。日本人の業務手法に合わせてITをカスタマイズしようとして、多くの企業で「使えねえなあ」という残念な結果になったのです。

そうこうしているうちに、日本人の生産性は一向に向上せず、諸外国との差が広がる一方でした。そして日本は、労働者の質は高いのですが、生産性は先進国で最低になってしまいました。

悲劇と喜劇は繰り返す 何度でも

これと同じことが、今さら学校の教室では繰り広げられています。つまり、今まで通りの授業をICTで再現しようとしているのです。うまくいっている東進ハイスクールの映像授業や、リクルートのスタディ・サプリのように、ドラスティックに「授業形態」を変えなくてはならないと思います。けれども、現場の先生がたは日本企業がなぜIT活用において失敗をしたなど知る由もないですし、自分たちのやり方しか知らないし、正しいと思っているので現状の形態に固執します。

つまり、ICTが、授業の教材の「お供」程度になり、結局そのセッティングやメンテナンスを教員たちが行い、余計に時間がかかり、効率化どころの話ではなくなってしまっています。

学校をドラスティックに変更する覚悟はあるのか

授業単位を時間で測っている時点で、学習の生産性の向上はないと思います。児童生徒に一律の時間で成果を測るのではなく、個々人で進められるようなアチーブメントによって測られるべきです。そして、教師はチューター的な役割を担うことになるのではないでしょうか。ほかにももっとよい案はあると思います。

教育のICT化を成功させるためには、現場に根本的な「授業形態」の変更を迫ります。つまり、「学校制度の再定義」するくらいの意気込みがないと、成功は覚束ないと思います。東進ハイスクールでもリクルートでもない文科省や教委にそれができるでしょうか。

そんな覚悟が文科省にも教委にも学校現場にもあるとは思えません。20年前の日本企業の失敗の轍を踏まないためにも、「覚悟」を示してほしいものです。

実際のICT教育の現場は

実際の現場でのICT教育は、じつに残念なことになっています。教室でタブレットが導入されつつありますが、ユーザビリティや要件定義がうまくいっていないのか、成果は上がっていません。むしろ導入されたから、無理矢理使えと言われて、負担になっているのが現状です。一方、10数年前からどの学校でも、パソコンルームができました。コンピュータに慣れ親しむという主旨で授業を行っています。

パソコン室での光景をご紹介すると、多くの教員は、パソコンに入っている児童生徒向きに開発されたソフトウェアを使って、時間割表を作らせたり、作文を打たせたり、ネットで調べたことのプレゼンテーションを作らせたりしています。教員一人で40人のパソコンの指導などできるわけもなく、子供たちは思い思いの操作をして時間を潰しています。

パソコンルームが無法地帯に・・・

こうなると無法地帯になりかねません。高学年のある児童は画像検索でとても酷い画像を検索し(フィルタリングがあっても、画像検索まではできました)、別の児童は他のクラスの児童が作って保存していた詩に卑猥な言葉を書き加えたり、また別の児童はコマンドプロンプトを立ち上げて一心不乱になにかを打ち込んでいたり(なにをやるつもりだったのでしょう?)、また別の児童は他の児童とチャットをしていました。

このとき、私はこのクラスには自習の監督として入っていました。おそらく担任の教員は、私の手を煩わせないようにパソコンの時間にしてくれたのでしょうが、じつにカオスな光景が広がっていました。私はこのときいらい、自分のクラスは必要以上にパソコンルームに近づけまいと思った次第です。

中沢 良平(元小学校教諭)

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