東レがテンカーテ社を買収する軍事的な意義

2018年03月27日 06:00

今週発売の週刊東洋経済では東レがオランダのテンカーテ・アドバンスド・コンポジット社を買収するという話がでています。

東レ、大型買収の裏に危機感

東レが柱の炭素繊維複合材料事業で大型買収に動いた。蘭テンカーテ・アドバンスト・コンポジット社(TCAC)の全株式を2018年後半に取得し、傘下に収める。負債の肩代わりを含む総費用は1230億円で、東レとしては過去最大の買収案件だ。

これまで東レは自ら市場を切り開き、高いシェアを持つ熱硬化のCFRPに研究開発を集中させてきた。そのため、熱可塑の技術開発で出遅れた。現時点では親密なボーイングからもまだ材料認定を受けていない。他方で帝人などライバル企業は、すでに旅客機部品用に熱可塑CFRPを供給。将来的にCFRPの本格採用が期待される自動車用途でも必須の技術だ。

そうした中で東レが是が非でも欲しかったのが、TCACだった。同社は早くから航空機用途で熱可塑性CFRPを研究。すでにエアバス最新鋭機のつなぎ留め部品に使われているほか、新規採用に向けたプロジェクトも進んでいるという。

記事では主に炭素繊維のコンポジットのことについて書いているのですが、軍事的な話が書かれていません。

テンカーテ社は防衛分野では炭素繊維のコンポジットだけでなく、コンポジット装甲の大手でもあります。
コンポジットの装甲板だけはなく、コンポジット装甲を使ったハッチなども提案しており、技術的にも極めて高い物を持っています。また防弾チョッキなどの素材も販売しており、日本のメーカーも採用しています。更に米軍に戦闘服用の難燃繊維も供給しております。その素材には帝人がアラミド繊維を供給しております。

テンカーテ社を買収するということは、東レがより深く、世界の防衛マーケットにコミットし、また防衛部門の強化になるということです。

帝人のアラミド繊維、トワロンは世界第二位のシェアを誇っていますが、これまたオランダ企業を買収して手にいれたものです。極めて似たケースになりそうですが、テンカーテ社の方が、より最終製品に近く、より軍事専用の製品を作っております。果たしてこれを東レは同マネージしていくのか。

また東レがテンカーテ社の軍事部門のアセットを国内の防衛産業に使うのかどうか。
例えば、陸自の装甲車両など向けにに同社の製品を売り込んでいくのかは気になることろです。
また自衛隊の戦闘服に同社の難燃繊維が採用されるのであれば、ビニロンよりは遙かにマトモになるでしょうが、
そういうことは考えているのか、とか。

また一部世論の「死の商人」的な批判にどう対処していくのか。

これら点について、本記事にはもう少し突っ込んだ取材と報道をして欲しかったです。

ドイツの英語の防衛専門誌「European Security & Defence」に陸自新型8輪装甲車に関する記事を寄稿しました。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年3月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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